夫婦愛を育む 15
会話がない?

ナビゲーター:橘 幸世

 良好な人間関係を築く上で、良いコミュニケーションは不可欠です。それは、夫婦関係でも同じこと。核家族化が進み、子供たちが巣立った後の夫婦二人の生活では、会話は日常のスパイスかもしれません。

 「会話がない」と言って嘆くのは、一般的に妻の側が多いと思われます。女性は「共感」を糧としますので。一方男性は、仕事などで悩みがあれば、黙り込みます。そんな時妻が一生懸命話し掛けても、「うん」とか「すん」しか返ってこないんですね。「考え事をしている」とでも言ってくれるタイプの男性なら、そもそも妻が夫婦間コミュニケーションに悩むことはないでしょう。取り付く島もない夫に、妻は不満や寂しさを感じるかもしれません。
 良いコミュニケーションのきっかけになればと思い、「二人でどこかに出掛けない?」と誘っても、良い返事が返ってこない。そんな時、どうしましょうか?(単なる出不精? 他の事でいっぱいいっぱいで余裕がない? 妻と向き合うのがおっくう?)

 友人と街を歩いていた20代のある日、私と彼女はいつの間にか二人とも鼻歌を歌っていました。それぞれ別の歌を口ずさんでいたのです。お互い相手に合わせるでもなく、自分の気分のままに、並んで歩いていました。その時ふと、「ああ、これが理想的な自然体の関係なのかもしれない」と感じたのです。
 私たちは人といると、相手に合わせようと気を配ります。会話が途切れたら気まずくて、何か話題をひねり出そうとしますよね? でも、仲の良い家族なら、同じ空間を共有しながらも無理に会話しようともしませんし、気を使いません。お互いの存在をそのまま受け入れている。そんな関係が家族以外の人たちとも持てたら、さぞ居心地の良い世の中になるでしょう。

 夫が無口な場合、妻なればこそ気を使わずに無口でいられる、と妻が受け止められたら、彼女の気持ちも少し楽になるかもしれません。
 また、会話は自分を受け止めてくれる相手としたいものです。自分の言葉や考えを否定しない、たとえ異なる意見でも「ああ、そう考えるのね」と自然体で受け止めてくれる。そんな相手となら、楽しく話すことができるでしょう。
 神様は人が一人で生きるようには創られておられませんので、やはり誰もが、自分を“分かってくれる人”を求めます。安心して話せる相手と感じれば、少しずつ思いを語るようになるでしょう。

 コミュニケーションを深めようとする時、まずは大原則の「あるがままを受け入れる」ところから始めてみるのが良いと思います。二人でいる空間が居心地の良いものとなるよう努めましょう。その上で、上手な聞き方について学んでみてはいかがでしょうか?