青少年事情と教育を考える 182
児童虐待への対応策

ナビゲーター:中田 孝誠

 増え続ける児童虐待に対して、10月から11月にかけて厚生労働省は新たな対応策を示しています。

 昨年度、全国の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は205044件に上りました。20万件を超えたのは初めてです。

 こうした事態に、厚生労働省は先月、虐待を受けた子供を一時保護する際、保護者が同意しなかった場合に裁判所が「一時保護状」を発付できる制度を導入する案を示しました。
 反対する保護者に対して児童相談所が強制的に保護するのではなく、司法審査を受けた上で子供を一時保護するかどうか決定するというわけです。

 また同省は、虐待の兆候が見られる家庭にヘルパーが訪問し、家事や育児を手助けするなどの支援を行う事業を開始する方針を固めました。

 さらに、児童虐待に専門性を持って対応する「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」という資格を創設する案も公表されています。
 虐待に対応する児童福祉司の不足は深刻な問題でした。国家資格として認定するという議論もありましたが、まずは専門人材育成の一案が示されたわけです。

 一方、「こども庁」創設に関する有識者会議では、親が孤立した育児に陥らないよう、専門職が家庭を訪問するアウトリーチ型支援の重要性が指摘されています。

 児童虐待対策として、命の危険にある子供を救済することはもちろんですが、予防策として問題を抱えている親や家庭への支援も行われています。

 子供にとって温かく安定した家庭を築ける支援が何より大切だということです。