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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

総選挙結果~自民絶対安定多数確保、“立憲共産党”は惨敗

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、10月25日から31日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 盧泰愚元大統領が逝去(26日)。台湾の国連機関参加「支持を」、米国務省が声明(26日)。蔡英文総統、米軍の台湾軍訓練認める(27日)。文在寅大統領、ローマ教皇に訪朝提案(29日)。第49回衆院選が投開票(31日)、などです。

 衆議院465議席(小選挙区289、比例代表176)の獲得を競う第49回衆議院選挙が10月31日に行われました。
 当日午後8時以降に開票作業が始まり、翌11月1日未明に全議席が確定しました。

 結果として、自民党(自民)はコロナ禍や議員の不祥事などのマイナス要因を含め、現在想定し得る最高の形で戦いを終えることができたと言えます。
 獲得議席は261議席、絶対安定多数を確保したのです。絶対安定多数とは衆議院の全委員会の委員長と各委員会で過半数を占める数をいい、議会運営にとって好条件となります。

 一方、野党第一党の立憲民主党(立民)は、共産党(共産)、国民民主党(国民)などと一本化した小選挙区を中心に、政権批判票を取り込む戦いを展開。小選挙区の7割で候補者を一本化した結果、選挙区では公示前を上回ったものの、比例票は伸びず全体としては議席減となってしまいました。
 野党第一党は維持したものの、公示前110議席から96議席となったのです。

 立民と共産の「限定的な閣外からの協力」を軸とする野党共闘にくみしなかった国民(8から11議席へ)と維新(11から41議席へ)が議席を伸ばし、立民と共産が議席を減らしました。共産は公示前12議席から10議席となっています。

 国民が求めている野党の姿ではなかったということです。立民・共産の政権枠組み合意を受けて、麻生太郎自民党副総裁は「立憲共産党」であると批判し、甘利明幹事長は、今回の総選挙は政権選択選挙というより「体制選択選挙」であると指摘しました。自公を中心とする自由民主主義体制か立民・共産を中心とする「共産主義体制」かの選択となると強調したのです。

 立民・共産の政権合意は与党側から、選挙目当ての「野合」であると批判されました。天皇に関することや日米安保条約や自衛隊の憲法上の位置付け、すなわち国家像や外交・安保の基本政策が全く異なる政党間の政権合意はあり得ないというのです。

 立民・共産からは、だからこそ「限定的な閣外からの協力」だとし、協力は「市民連合」を介して結ばれた政策協定の実現であると述べていたのです。
 しかし、詳細は避けますが、政策協定の中身は外交・安保に関する内容が中心を占めており、限定的協力などあり得ない内容なのです。

 政権与党への批判票は、今回は維新に流れました。東京都議選においても立民・共産で一本化された候補者より、都民ファーストに流れたのと同じ構図です。はっきりしたのは、“立憲共産党”には未来がないということです。

 11月10日に特別国会が召集され、第二次岸田文雄政権が動きだします。国民の信任を受け、力強く内外の難題解決に向かって前進してほしいと思います。