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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

極限のアフガンと日本

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、10月18日から24日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 ミャンマー国軍、政治犯を釈放(18日)。北朝鮮がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)発射(19日)。中露印中心にアフガン関連国際会議開催(20日)。中国、「不動産税」を試験導入へ(23日)。中東欧と台湾接近、進む中国離れ(26日から)、などです。

 アフガニスタンの窮状についての報告が上がっています。
 世界食糧計画(FWP)は10月5日、現在、アフガンで食料が不足している人は約1400万人に上り、これから厳しい冬を迎えることを考えれば、年末までに約320万人の5歳未満の小児が栄養失調になる恐れがあると警告しています。

 国際社会も人道支援に動き出しました。しかし、欧米諸国と中露の対立が影を落とし、一致した対応ができないでいます。

 何よりも支援を困難にしているのはアフガン国内事情です。
 9月7日、タリバンは暫定政権の発足と閣僚名を公表しました。しかし国際社会が期待した「包括的な政権」とは程遠いものでした。
 前政権からの継承や女性閣僚名は一切なく、国際テロリストとして国連や米国が指定している人物も入っていたのです。

 タリバン政権の強圧的統治事例も報道されています。
 カブールでは多くの工場や民間病院は閉鎖されたままであり、給与の未払いやタリバンへの不信から一部地域を除いては公務員の復職は進んでおらず、省庁は事実上業務を停止した状態です。

 銀行では、タリバンが1週間の引き出し限度額を現地通貨で200ドル相当に制限したことにより、長い列ができています。

 中部ダイクンディ州では少数派ハザラ人の旧アフガン軍兵士ら13人が処刑・殺害され、約3000世帯が立ち退きを命じられました。
 アフガン南部では、男性にひげそりを禁じる極端なイスラム統治に基づく通達も出され、また一部地域では女性はスマートフォンの所有を禁じられ、外出の際は頭部を覆うスカーフ「ヒジャブ」の厳格な使用も義務付けられています。

 自爆テロも連続して起きています。
 10月に入ってからも、3日、カブールのモスク周辺で爆発が起き、「イスラム国(IS)」が犯行を認めています。少なくとも10人が死亡しました。

 8日には、クンドゥズのシーア派モスクで自爆テロがあり、「イスラム国」が犯行声明を出しました。死者数は72人に上っています。

 そして15日、カンダハルのイスラム教シーア派モスクで自爆テロが発生。少なくとも32人が死亡、68人が負傷したと報道されているのです。テロ組織による犯罪声明は現時点では出ていません。

 アフガン情勢を巡るG20首脳会議がオンラインで10月12日に開催され、バイデン大統領、岸田文雄首相、モディ首相、メルケル首相らが参加しました。
 習近平総書記は参加せず、王毅外相が出席。EU(欧州連合)は約1300億円を拠出すると表明し、日本は約200億円の拠出を表明しています。

 他方、10月20日、ロシア政府主催でアフガンに関する国際会議がモスクワで開催されました。これは2017年に設置したアフガン和平の枠組み「モスクワ形式」に基づくものです。

 今後中露は、欧米との協議を重視せず、独自にアフガン政策を進める構えを明らかにした形です。

 今こそ国連が中心になって「アフガン問題」に取り組むべきです。それには国連安保理の常任理事国である米英仏中露の協力が不可欠ですが、中露を中心とする独自の動きがその道を阻んでいるのです。

 国連安保理改革を日本が主導すべきです。