シリーズ・「宗教」を読み解く 173
キリスト教の人生観⑤
伝統を紡いできた者たち

ナビゲーター:石丸 志信

 キリスト教の人生観を一言で言うと「キリストに倣う生き方」と言える。
 中世の修道者(トマス・ア・ケンピス)が言うように、篤実なキリスト教徒は、イエス・キリストの生涯に絶えず関心を集中してきた。

 聖書を読み深めながら、イエス・キリストが公生涯において何を語り、何を行ったかに注意を払ってきたのだ。また、その生涯の終わり、十字架の死に際して天の父と弟子たち、ユダヤ教徒たち、そして、人類に対してどのような態度を示したのかを見つめてきた。

▲イエス・キリスト

 たとえ無実の罪によってであろうと、死に際しては誰にも恨みを抱かず、自分にやりを向ける者を許した。ののしる左の強盗を憎まず、右の強盗を懐に抱いた。最後の一瞬まで天の父を不信することなく全てを委ねて逝った。

 弟子たちは、そのようなキリストの受難と死に際してこそイエスの真価が現れたと受け止めた。さらにイエスの復活によって天の父からキリストとして確証されるものになったと見ている。

 それで四つの福音書には全て、イエス・キリストの受難・死・復活の出来事があからさまに記されている。

 キリスト教は、生きるにしても死ぬにしても、一挙手一投足、イエス・キリストと同じように生きて死のうとする者たちがその伝統を紡いできたのではないかと思う。