青少年事情と教育を考える 8
危機的な中高生の読解力低下

ナビゲーター:中田 孝誠

 世界の子供たちの学力調査で「日本が1位になった」「順位が下がった」と話題になることがあります。これはOECD(経済協力開発機構)が世界の15歳の子供を対象に定期的に行うPISAProgramme for International Student Assessment)という学力調査です。

 主に「科学的リテラシー」「数学的リテラシー」「読解力」の調査があり、日本の子供たちは毎回、上位の成績を収めています。ただ、読解力については一番最近の2015年調査で、前回(2012年)と比べて「有意に低下している」と言われました。文部科学省はこの時、コンピュータを使う調査に移行したためであって学力が低下したわけではないと分析していました。

写真はイメージです

 一方、国立情報学研究所の新井紀子教授らの研究チームが2016年から17年にかけて全国の中高生2万人あまりに読解力調査を行いました。
 それによると、中学生の3割、高校生では実に5割が教科書に書いてある内容を理解できていないという結果が出ました。基礎的な読解力が明らかに低下しているというわけです。書いてあることの意味が分からない・・・・・・。そうなると日常生活で困ることも出てきます。将来、社会人になった時、仕事で必要な書類の意味が理解できなかったり、勘違いをして大失敗をしてしまうということもあり得ます。あるいは、必要な免許(例えば運転免許や資格)を取得できないということもあるかもしれません。
 新井紀子教授はAI(人工知能)の研究者です。よく、「人の仕事がAIに取って代わられる」と言われます。「いや、AIがいくら発達しても人間にしかできない仕事が生まれるから大丈夫」と言う人もいます。しかし新井教授は、基礎的な読解力がないと、新しい仕事が生まれたとしてもできない、失業する人が溢れる、そうなるとAI恐慌の嵐にさらされる、と警告を発しているのです。そして「中学校を卒業するまでに、中学校の教科書を読めるようにする」ことが緊急の課題だと述べています(『AI vs.教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社)。新井氏の予測は果たして大げさな話でしょうか。

 国語に限らず、読解力はどんな学問でも、いや人間として生きる上で大切な力です。それが低下しているということは、国家的な危機だと言っていいのではないでしょうか。