夫婦愛を育む 159
誰の背中を見ている?

ナビゲーター:橘 幸世

 4月27日付読売新聞の相談欄に、夫に直してほしい振る舞いがあるがどうしたらいいか、という質問が載りました。

 質問者は、「子どもの教育上良くない。子は親の背中を見て育つというのにこのままでは真似してしまう。夫に言っても直してくれない」と訴えます。

 妻が夫を変えようとしても、決して夫は変わらない、むしろ逆効果、と講座で話してきている私は、どんな回答かなと興味を持ちました。

 返ってきたのは、
 「あなたの背中も見てますよ」

 私は内心、
 「オ~!」

 回答者は、「父親に対してイライラしている母親の姿を見て、子どもはどう思うでしょう?」と問い掛けます。
 そう、私の子供たちも本当によく見ていました。時に、親とは違った視点で…。

 このケースでは、夫がテレビを見る時間やゲームをする時間が長過ぎる、子供が真似をしてテレビやゲームにはまり過ぎたらどうしよう、という妻の心配でした。教育熱心なのでしょう。
 質問者の旦那さんは、夫として、父親としての基本的責務を果たしているようですので、あまり目くじらを立ててはかわいそうかと思いました。

 親世代がテレビを見ていても、今の若い人たちはあまり見ませんし、ゲームは、親がしていなくても周りからいくらでも影響を受けるでしょう。
 それよりは人との接し方など、もっと根本的なところで親の影響を受けるのではないでしょうか。
 質問したかたは、今夫がしてくれていることに感謝と称賛を表すようにしたらいいかと思います。

 この欄を読んで思い出したのが、『新・良妻賢母のすすめ』の著者であるヘレン・アンデリンさん自身のエピソードです。

 夫の判断に納得がいかず、子供のためには自分が正しいと己の意見を主張しますが、夫は折れません。幸福の原則を知っていて、自分の立場と限界をわきまえている彼女は、最後は夫の判断に従いました。そのやり取りの一部始終を見ていた子供たちは、母親の姿勢にとても良い影響を受けました。父を敬い、時に家族のために犠牲となって助け合う喜びを学んだのです。

 さらにその流れで思い出したのが、昔愛美書店(光言社が運営する書店)で買って愛読していた『偉人の母』(玉川大学出版部、小原國芳編纂)でした。国内外の偉人たちの母親の生きざま・姿勢をつづったものです。

 そこに出てくる偉人たちの父親は、決して立派とは言えない人たちが少なくなかったように記憶していますが、母親や母親代わりの女性が偉人たちの土台を作りました(『偉人の父』という本は聞きませんね)。
 男性の家事育児参加、女性の社会進出が叫ばれて久しいですが、家庭における女性の役割の大きさを再確認した次第です。


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