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松本雄司氏の
夫婦愛を育てる16のポイント 22
9 相手を生かす言葉①

 アプリで読む光言社書籍シリーズ第15弾として、「夫婦愛を育てる16のポイント」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 『愛の知恵袋』でおなじみの松本雄司氏が『祝福家庭』誌に連載していた「夫婦愛を育てるために」の書籍版です。男と女の違いから夫婦の愛・夫婦生活に至るまで、ポイントを分かりやすく解説し、まとめています。

松本 雄司・著

(光言社・刊『夫婦愛を育てる16のポイント』より)

相手を生かす言葉

家族がバラバラに
 「いったいどうしたらいいんでしょうか……」

 その婦人は、思い詰めたような表情で相談に来ました。

 「どうなさったんですか」

 「もう、このままでは家族がバラバラになってしまいます」

 と言うので事情を聞いてみました。三人の子供さんがおられて、長男は大学へ行くと同時に県外へ出て、夏休みも帰ってこない。次の長女は、高校を出て市内の会社に就職したが、「早くこの家を出たい」と言って、自分でアパート暮らしを始めた。たまに母親が訪ねていっても、ドアを半分開けて「何の用?」と言うだけで、部屋の中に入れてくれない。一番下の次男は中学生だが、最近は“うつ症状”が出てきて、学校を休むようになった。父親とも母親とも口をききたがらない。子供たちがみんな自分たちから、離れていくようで困惑しているようでした。私は夫婦関係に、課題があるのはすぐ分かりましたので、聞きました。

 「ご主人とはうまくいっているんですか?」

 「うまくいっているとは言えませんね。すぐ、口げんかになってしまうんですよ」

 「どうしてですか?」

 「私が何か言うと、夫はすぐ怒って、きつい言葉が返ってくるんです。そうすると私も頭にきて、また言い返すもんですから、結局、けんかです」

 一方、ご主人に聞いてみると、やはり、困っているようでした。

 「いや、私がもっと太っ腹になって、何を言われても、のみ込んで許せればいいのかもしれませんが、妻から命令口調で言われると、ついカッとなって、きつい言葉になってしまいます。そうすると、妻が、『あなたには愛情がない!』と言ってもっと怒るんで、結局、いつもけんかです。そんな調子ですから、イライラして、子供たちに対してもついしかってばかり……。これじゃ、子供たちが家から出ていきたがるのも、無理ありませんね」

言葉には力がある
 このご家族の場合、夫も妻も子供たちもみんな心が傷ついてしまっています。長い間、家庭の中での言葉がとげとげしかったためでしょう。私たちが発する一つひとつの言葉は、実は想像以上に、恐ろしいほどの影響力をもっています。

 人の心を癒(いや)し、喜びと勇気を与え、生きる力を与える言葉がある反面、その一言で、相手の心を深く傷つけ、怒りと恨みを招くような言葉もあります。昔から“言霊(ことだま)”といわれ、言葉には、霊的な力があります。つまり、言葉には思念エネルギーが込められています。愛情に満ちた“思い”から発した言葉は、聞いた人の心を温かく包み幸せな気持ちにしてくれます。一方、怒りの“思い”から出た言葉は、聞いた人の心に、打撃と苦痛を与えます。

 そのことは、我々が毎日の生活で体験しているはずなのですが、自分が優しい思いやりを欲しているのに、それが得られないので、人にもつい冷淡な言葉をかけてしまいやすいものです。

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 次回は、「相手を生かす言葉②」をお届けします。