幸福学と宗教的な生き方 6
第四因子「あなたらしく!」因子

魚谷 俊輔

 本シリーズでは、日本における幸福学の第一人者である前野隆司(まえの・たかし)氏が著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)で述べていることを理論的な枠組みとして用いています。

 このシリーズでは、日本における幸福学の第一人者である前野隆司(まえの・たかし)氏が著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)で述べている「幸せの四つの因子」と宗教的な生き方との関係を明らかにしている。

 第四因子は、「あなたらしく!」因子であり、「独立とマイペースの因子」とも呼ばれる。
 要するに、他者と比較せず、自分らしくマイペースに生き、自己受容することによって、幸福感がアップするということだ。

 これがカーネギーの思想とどのように重なり合うのかを考察してみたい。

 カーネギーは著書『道は開ける』の第16章で、「自己を知り、自己に徹しよう」と呼びかけている。
 彼は「自分らしく振舞わないことこそ、さまざまな神経症・精神異常・感情抑圧の潜在原動力となっている」(189ページ)と述べ、イタリア系アメリカ人の作家であり教育者でもあるアンジェロ・パトリの以下の言葉を紹介している。

 「最も悲惨な人間は自分の肉体と精神を捨てて、別の人間や動物になりたいと願う人である」(同、189ページ)

 カーネギーはまた、他者からの批判や意見に過度に振り回されず、ありのままに生きることを勧めている。
 人はとかく他者からの批判に傷つくものだが、不当な非難は無視するに限るというのだ。

 家庭連合のように共同体に対する所属意識が強く、人間関係が濃密な組織においては、独立とマイペースの因子は他の因子に比べるとさほど強く作用しているとは思われない。

 家庭連合に所属する人々は、どちらかといえば「自由」よりも「絆」を求める。にもかかわらず、家庭連合の教えや実践の中には、この因子に該当する部分も存在することを指摘しておく。

 家庭連合では、天使長ルーシェルが堕落した原因が「愛の減少感」であったため、他人と自分を比較してうらやんだり嫉妬したりすることを戒めている。

 他者との「横的」な関係ではなく、神との「縦的」な関係を重要視せよという教えである。
 これは社会的比較志向を抑制する効果があり、幸福感の増大に寄与するものと思われる。

 また、信仰を持つということ自体が「自己概念の明確傾向」を高めることになり、周りのさまざまな状況の変化に影響されずに自分自身についての信念を安定させる効果がある。

 以上のように、宗教的信仰が一般的にそうであるのと同様に、家庭連合における信仰の在り方が人の幸福感を増す多くの因子と関係していることが分かるであろう。

 従って、家庭連合の信仰を持っている者は、その信仰が幸福感を増大させ、それがまさしく信仰の動機となっているのである。

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