幸福学と宗教的な生き方 5
第三因子「なんとかなる!」因子

魚谷 俊輔

 本シリーズでは、日本における幸福学の第一人者である前野隆司(まえの・たかし)氏が著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)で述べていることを理論的な枠組みとして用いています。

 このシリーズでは、日本における幸福学の第一人者である前野隆司(まえの・たかし)氏が著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)で述べている「幸せの四つの因子」と宗教的な生き方との関係を明らかにしている。

 第三因子は、「なんとかなる!」因子であり、「前向きと楽観の因子」とも呼ばれる。要するに物事を楽観的に捉え、失敗を引きずらず、前向きに考えることを習慣にすることによって、幸福感がアップするということだ。

 これがカーネギーの思想とどのように重なり合うのかを考察してみたい。
 カーネギーが著書『道は開ける』の中で、この姿勢に関連して述べていることをまとめると以下のようになる。

 まずは起こり得る最悪の事態とは何かを自問すること。そしてそれがやむを得ない場合には、最悪の事態を受け入れる覚悟をすること。それから落ち着いて最悪の事態を好転させるよう努力すること。
 そして心配事の多くは実際には起きないことを統計的に理解し、肯定的態度を養うこと。心配の本質は「ネガティブな予測」なので、それを現実的、前向きな視点にシフトさせることが重要である。

 一般に信仰を持つ人は楽観的である。それは人知を超えた偉大なる存在が自分の人生に介入し、自分を保護しているという信念があるからである。
 たとえ客観的な状況が厳しかったとしても、それに心を奪われず希望を持って生きていく力を宗教は与えるのである。

 家庭連合の信仰の特徴は、生ける神が自分の人生にダイナミックに関わっており、自分の身の回りに起きるさまざまな出来事が、神や霊界の働きであると捉えることにあると言ってよい。

 また宗教的儀礼は、人のネガティブな気持ちを癒やし、前向きに変えていく効果があることは多くの社会学的研究で指摘されているとおりである。
 毎週礼拝に参加することを通して一週間の嫌な出来事や感情を整理し、信仰に基づいて再出発していくという「気持ちの切り替え」を信仰者は常に行っているのである。

 定期的に集会に参加してみ言(みことば/教会の教え)を受けたり、清平の修練会に参加したりすることも、精神的な「リフレッシュ効果」がある。そしてその中で確認するのは、たとえ多くの問題を抱えた自分であったとしても、神は変わらずに自分を愛し続けているのであるから、自分自身を受け入れて前向きに歩んでいこうという「自己受容」の感覚である。

 教会における人間関係は、利害や損得の入り混じった世俗社会の人間関係とは異なり、神を中心とする兄弟姉妹の関係であるため、私心がなく、純粋で濃密な人間関係を構築することが可能である。
 それは家庭連合の魅力の一つとなっている。