2026.08.07 22:00

幸福学と宗教的な生き方 4
第二因子「ありがとう!」因子
魚谷 俊輔
本シリーズでは、日本における幸福学の第一人者である前野隆司(まえの・たかし)氏が著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)で述べていることを理論的な枠組みとして用いています。
このシリーズでは、日本における幸福学の第一人者である前野隆司(まえの・たかし)氏が著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)で述べている「幸せの四つの因子」と宗教的な生き方との関係を明らかにしている。

第二因子は、「ありがとう!」因子であり、「つながりと感謝の因子」とも呼ばれる。
要するに多様な人とのつながり、感謝の気持ち、他者への親切・利他性が幸福感を生むということである。
これがカーネギーの思想とどのように重なり合うのかを考察してみたい。
カーネギーは著書『道は開ける』の第四部「平和と幸福をもたらす精神状態を養う七つの方法」の中で、感謝の気持ちを育て、他人を批判せず称賛することを強く勧めている。恨みや敵意を手放し、他者を助けたり、親切にしたりする行為が自分の心配を忘れさせ、幸福をもたらすと指摘しているのである。
宗教ほど感謝することの大切さを説くものはない。自分は偉大な存在によって守られ、導かれながら生きていることに気付くことが信仰の出発点である。そうした感覚を持たない人に比べ、信仰を持っている人は日常のさまざまな出来事に感謝する傾向が強い。これは家庭連合においても同様であり、「感謝」の言葉を口にする教会員は多い。
家庭連合では、伝道される過程において「信仰の親」やカウンセラー、教育を担当するスタッフからたっぷり愛情を注がれ、大切にされる。
他人から本気で心配され愛される体験がその人の幸福感を高めることは疑いがない。
自分のことを本気で心配し、気にかけてくれた信仰の親からの手紙を大切に保管している信徒も多い。
家庭連合の信仰のモットーは「為(ため)に生きる」である。人は自分のためではなく、他者のために生きた時に本当の幸福を感じることができるという教えにより、家庭連合の信者は愛されるだけの立場ではなく、愛する立場に立とうと努力する。
これは日々の信仰生活の中で兄弟姉妹に親切にし、喜ばせることも含まれるが、最も大切な信仰実践は人を伝道することである。伝道する時には、自分は信仰の親として徹底的に霊の子を愛する側に回る。
それを通して人を愛する喜びを感じるのが、家庭連合の信仰生活の醍醐味(だいごみ)である。どんな信者も、愛されるばかりではなく、自分から愛情を注ぐ対象が生まれたことに喜びを感じるという、貴重な体験をする。
こうした人間関係が多くの信者にとって喜びとなり、信仰の動機付けになる。人の信仰心を持続させる要因は、その人をとりまく信者たちによる励ましや人間的触れ合いであり、これはそれまでの人生が寂しかった人であるほど、新鮮な出会いとなり、人間交際の喜びとなるのである。