2026.07.31 22:00

幸福学と宗教的な生き方 3
第一因子「やってみよう!」因子
魚谷 俊輔
本シリーズでは、日本における幸福学の第一人者である前野隆司(まえの・たかし)氏が著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)で述べていることを理論的な枠組みとして用いています。
このシリーズでは、日本における幸福学の第一人者である前野隆司(まえの・たかし)氏が著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)で述べている「幸せの四つの因子」と宗教的な生き方との関係を明らかにしている。

第一因子は、「やってみよう!」因子であり、「自己実現と成長の因子」とも呼ばれる。より具体的には、「コンピテンス(私は有能である)、社会の要請(私は社会の要請に応えている)、個人的成長(私のこれまでの人生は、変化、学習、成長に満ちていた)、自己実現(今の自分は、「本当になりたかった自分」である)に関連した因子」(『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』、125~126ページ)である。
要するに前野氏は、 夢や目標を持ち、自分の強みを生かし、努力・成長を続けることによって、なりたい自分に向かう行動が幸福感を生むと言っているのである。
これがカーネギーの思想とどのように重なり合うのかを考察してみたい。
カーネギーは著書『道は開ける』の中で、「今日、一日の区切りで生きよ」(第一章)と強調し、過去の後悔や未来の不安を捨て、今できる行動に集中するよう勧めている。
また、問題を解決する魔術的公式(第二章)の中で、最悪の事態を分析・受容し、それでも改善しようと積極的に行動することを勧めている。これは前野氏の言う「やってみよう」の精神そのものである。
カーネギーは心配を減らすことでエネルギーを自己実現に向けることを説いており、各自の成長を促している。すなわち、「行動と努力」こそが幸福の鍵であり、受動的な心配状態から脱却し、能動的に生きることを推奨しているのである。
家庭連合の人間観は、「神の子女としての人間」が基本にあり、これは個人に対して肯定的なアイデンティティーを与える役割を果たしている。
人生の意味が分からない、自分自身の存在に価値を感じられないといった悩みを抱えた人々に対して、「自分は神様の子供だったんだ」という回答を与えることは、その人の幸福度を上げるのに貢献する。
さらに、「氏族のメシヤ」というアイデンティティーは、個人に対して一種の使命感を与え、自分は氏族を救うべき特別な存在であるとの自覚を与える。これはその人のコンピテンスを上昇させると考えられる。
家庭連合では、人間には成長期間があり、個人は信仰生活を通して霊的に成長していくと教えている。
その究極的な目的は個性完成、人格完成で、日々のさまざまな経験を通して自分がどのように成長したかを常に内省するのが家庭連合の信仰生活である。
このように、家庭連合の教えと信仰生活には、「自己実現と成長の因子」がしっかりと備わっているのである。