世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

シャングリラ会合、注目される日米防衛トップの発言

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、525日から31日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 中国、パキスタン首脳会議の開催(525日)。日米豪印(クアッド)外相会議、重要鉱物枠組み創設で合意(26日)。日本、国家情報会議設置法成立(27日)。日比首脳会談開催、軍事情報協定交渉入り(28日)。アジア安全保障会議(シャングリラ会合)開幕、31日まで(29日)、などです。

 アジア安全保障会議(シャングリラ会合)が529日から31日まで、シンガポールで開催されました。
 この会合は毎年開かれており、米中をはじめ欧州を含む、約40カ国の閣僚や軍高官、専門家らが参加する重要会議です。米国はヘグセス国防長官、日本からは小泉進次郎防衛相が参加しました。

 中国は、2年連続で国防相が欠席しました。シャングリラ会合では例年、台湾や南シナ海といった問題で中国に批判的な発言が相次ぐため、米国が対中警戒を広げる舞台だとみなして距離を置いているのです。

 中国の政府系ニュースサイト「中国網」は昨年6月、シャングリラ会合は「米国が『中国脅威論』を押し売りする場だ」と警戒をあらわにした主張を掲載しました。

 今回中国は、人民解放軍に属する国防大学の孟祥青教授をトップとする代表団を派遣しました。董軍国防相は昨年に続き欠席となり、代表団の格としては、最初に派遣した2007年以降最も低いものとなったのです。シャングリラ会合自体は2002年に始まっています。

 一方中国は、2006年から北京で開く安保対話「香山フォーラム」を開催しており、シャングリラ会合の対抗軸として位置付けています。

 5月30日、中国代表団トップの孟祥青教授が日本を非難する演説を行いました。
 「軍国主義の害毒を完全に清算していない」「日本の一部の勢力が戦争の犯罪行為を公然と美化している」などと主張し、「軍国主義の復活に警戒し、第2世界大戦の成果と戦後の国際秩序を適切に守らなければならない」と同調を求め、日本が平和憲法や非核三原則の見直しを推進しているとして「核拡散のリスクが高まっている」と批判したのです。

 他方、米国に対しては名指しを避けつつ、「覇権主義が地域の安全に衝撃を与えている」とし、一部の国が「地域の衝突をたびたび起こしている」と語ったのです。

 中国の対日批判は昨年末から激しくなっています。
 中国外務省は526日、パキスタンのシャリフ首相の訪中の機に、中パ両国の共同声明を発表しています。その中に、共通認識として「ファシズムや軍国主義を復活させるたくらみに反対する」と明記しました。名指しは避けていますが、明らかに日本を念頭に置いた内容でした。

 さらに、520日の中露首脳会談・共同声明でも「日本で加速する『再軍備化』が地域の平和と安定を深刻に脅かしている」と、日本を名指しで批判したのです。

 対する小泉進次郎防衛相の演説は素晴らしいものでした。
 高市早苗政権の姿勢を「新型軍国主義」だとする中国の批判に対して「虚偽の主張」だとして強く反論しました。
 日本は、先の大戦後一貫して国際法を順守してきたことを強調し、さらに中国を念頭に、「核兵器と戦略爆撃機を大量に保有している国が、そのいずれも持たない日本を『新型軍国主義』と呼ぶのはおかしい」と反論したのです。
 「平和国家としての歩みは地域と国際社会に評価されており、事実が虚偽の主張によって揺らぐことはない」と強調しました。

 そしてフィリピンのテオドロ国防相も、中国の対日批判を一蹴しました。
 「過去の戦争を持ち出して日本を悪者にするのは、自らの南シナ海での行動を隠すための煙幕」と中国に対して抗議したのです。

 米国のヘグセス国防長官の演説で再確認できたことが多くありました。
 まず、中国によるインド太平洋地域の支配を防ぐという米戦略は不変であることです。ヘグセス氏は「この地域全体に目覚ましい成長と機会をもたらしてきた現状を防衛する」として、中国による一方的な現状変更は認めない姿勢を示しました。

 さらに、日本の南西諸島から台湾、フィリピンに伸びる「第一列島線」を重視する考えも強調しました。米戦略は「第一列島線に沿った拒否的抑止を中核とするものだ」と明言したのです。この内容は、台湾有事を含む危機に対処する米国の姿勢が不変であることを示したのです。

 今回は、昨年の演説で2027年にもあり得るとの見通しを示した、台湾侵攻に関しては触れませんでした。そして台湾への武器売却に関しては、「いかなる決定も大統領が下す」と述べるにとどめています。

 今回のシャングリラ会合は、とりわけ、日米の連携が光った会議でした。



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