共産主義の新しいカタチ 109

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

憲法25条と生活権=シビル・ミニマム
松下圭一の構造改革理論(下)②

「革新自治体」誕生により根を下ろす
 例えば、「国民の生活が第一」とは、総選挙前「日本未来の党」に合流する以前に民主党から大挙離党して小沢一郎氏らのグループがつくった政党でしたが、この小沢氏が2009年の「政権交代」選挙で、スローガンに掲げたのが「国民の生活が第一」。松下氏はさらにこう続けます。

 「この経済成長の過程で、日本の都市型社会への移行がはじまり、そこでは、とくに私がシビル・ミニマムと名づけた二〇世紀的憲法条文である憲法二五条の生活権をめぐって、市民活動の群生、自治体改革の展開がはじまっていきます。今回、自治体の政府としての自立をみとめた内閣法制局の解釈転換(資料①)は、第八章「地方自治」をめぐるこの市民活動、自治体改革の成果です」

 このように松下氏自身が「シビル・ミニマムと名づけた二〇世紀的憲法条文である憲法二五条の生活権」と誇らしげに述べているように、社会権の中でも、「市民の最低限の生活を公が保障するシビル・ミニマム」の考え方が、いわゆる「革新自治体」の多発的な誕生により根を下ろしたと考えることができます。

 ここから、野放図な手厚い生活保障制度が常識となって、高度成長期にはバランスが取れていたと見なされたものが、21世紀を迎えた日本では、若年世代に大きな負担となってのしかかってしまったのです。

 松下理論はこのように、「社会主義国よりも社会主義的」とも称された日本の社会保障制度を下支えしたといえるのかも知れません。

 問題は、国も地方自治体も高福祉を基軸とする「大きな政府」により、国家財政が疲弊に疲弊を重ねていることで、国民の医療費など社会保障費は国家税収を超え、予算総額規模に達するのは驚かされます。

 この「シビル・ミニマム」について松下氏自身によるチャートを示したものが上の別掲図です。松下氏の記述で興味深いのは、従来の左翼や革命を標榜する労働者らは、「シビル・ミニマム」などの社会保障は「労働者階級の買収にほかならず、社会主義運動の堕落」と見なし軽視したというのです。

 確かに、体制を暴力革命によって転覆させようと思えば、社会保障という「アメ」(年金制度を確立したのはドイツの宰相ビスマルクと言われる)をもらうことは、体制を維持・延命させることに加担していると見なされたからです。構造改革路線はこうした拙速な暴力革命に異を唱え、「議会制民主主義による漸進的な二段階革命」を唱えていたわけです。

(続く)

「思想新聞」2026年5月1日号より

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