2026.04.20 22:00

魚谷さんの宗教講座 11
仏教編⑪
密教と禅
ナビゲーター:魚谷 俊輔(UPF-Japan事務総長)
5世紀ごろになると、大乗(だいじょう)仏教は次第にヒンドゥー教がもともと持っていた呪術の要素と混ざっていき、「密教(みっきょう)」が生まれることになります。
真言宗(しんごんしゅう)でいうところの「真言」とは、サンスクリット語でいうマントラのことで、儀式の時につぶやく「呪文」を意味します。これが一つ目の特徴です。
密教はインドに出現して中国で発展していくわけですが、この伝統がやがて日本にも伝わります。これを相続した二つの大きな宗派が天台宗(てんだいしゅう)と真言宗です。
ヒンドゥー教的な呪術は、お釈迦様が禁じたものであったため、本来は原始仏教にはなかったものでした。それが時間とともに入り込んできたということです。
二つ目の特徴は、神秘主義と秘密主義です。
例えば、曼荼羅(まんだら)の前で印を結びますが、これを「身密(しんみつ)」といいます。心に大日如来(だいにちにょらい)を念じることを「意密(いみつ)」といいます。そして、口に真言をたたえることを「口密(くみつ)」といいます。
これらを合わせて「三密(さんみつ)の行」といい、それによって大日如来と一体化し、現在の身体のままで成仏(じょうぶつ)できると教えました。これを「即身(そくしん)成仏」といいます。
これらの儀式は師から弟子に秘密裏に伝えられたので、「密教」というわけです。
密教の三つ目の特徴は象徴主義です。真言宗のお寺に行くと、必ず「金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)」と「胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)」という二つの曼荼羅がかかっています。これらは仏を中心とする宇宙を象徴的に表したものです。
こういう神秘的な仏教が出現するようになるわけです。
日本に大きな影響を与えたもう一つの仏教の伝統が「禅(ぜん)」です。
日本で禅宗といえば曹洞宗(そうとうしゅう)と臨済宗(りんざいしゅう)です。これは、中国で発展した禅の伝統を日本に持ち帰ってきたことにより始まりました。
「禅」は「ヨーガ」と同じ意味で、ヨーガの境地を表す「禅那(ぜんな)」(ディヤーナ)から1字を取ったものです。
もともとお釈迦様の教えの中には「禅定(ぜんじょう)」すなわち瞑想修行がありましたが、それを特に強調する宗派が生まれたということです。
中国禅の開祖とされる菩提達磨(ぼだいだるま)はもともとインド人ですが、中国に渡っていきます。彼は520年頃に、南インドから北魏(ほくぎ)に到着して、有名な嵩山(すうざん)少林寺に入り、禅を教え始めました。
少林寺は、少林武術の中心地として有名です。そこに慧可(けいか)という中国人の弟子が入って、中国禅の法統(ほうとう)が始まったといわれています。
こうして中国で禅の伝統が受け継がれていきます。
そこに日本から留学して、そこで禅を学んで持ち帰った人が、栄西(えいさい)や道元(どうげん)のような日本の禅宗の開祖になるわけです。
(次回に続く)