ほぼ5分で読める統一運動 71
統一運動が開く超宗教、超国家への道

稲森 一郎

 文鮮明(ムン・ソンミョン)師とその夫人韓鶴子(ハン・ハクチャ)女史の統一運動は、米ソ冷戦の最中であった1960年代から宗教間の対話と和解を主張し、キリスト教諸派、また仏教諸派、その他の宗教などとの研究会を開催してきました。

 そしてその集大成ともいうべき全宗教に通じる「世界経典」の編纂(へんさん)を提唱し、また実際に『世界経典Ⅰ』が発行(1991年)されました。

 文師は、真の世界平和は宗教の和合から成されるというテーマを多くの国家要人や宗教指導者と会談を通して共有し、19928月には韓国・ソウルで世界宗教議会を開催します。
 そして19992月に「世界平和超宗教超国家連合」を創設しました。

 このような経緯を経て、2000818日の国際連合(国連)における「世界と国連が行くべき道」と題するスピーチを、全世界の指導者たちの前で行ったのです。

 文師はスピーチの中で、国連の二院制というアイデアを提案されます。
 世界平和を政治経済のアプローチから実現していこうとする現行の国連を「下院」(体に相当)とするならば、世界平和を宗教のアプローチから実現する道を開く「上院」(心に相当)のような機構を設置して、両者が協力し合う形で、心と体の両方にわたる真の世界平和を実現していかなければならないと言明したのです。

 「著名な超宗教指導者など、精神世界の指導者たちで、宗教議会、あるいは国連の上院を構成することを、深刻に考慮していただくことをお願いします」(天一国経典『平和経』、1394ページ)と文師は訴えたのです。

 宗教の知恵の中に隠されたもろもろの高貴な内容が、緊急かつ深刻な問題の山積する現在の世界で応用、適用されて、平和創出を図る努力をしていかなければなりません。
 超宗教指導者で構成された協議体と、国連の政治指導者・外交官たちとが協力し、共同歩調を取ることによって、平和が実現されるという文師の視点は、神が与えた叡智(えいち)です。
 世界平和超宗教超国家連合は、神様を父母として迎える人類が一つの兄弟となって宇宙一家族を成す、そのような永遠の愛と和楽の天国、神様の祖国を成していくことでしょう。

 このような国連でのスピーチの実例となっている一つの出来事が、統一運動の柱の一つである「MEPI」(Middle East Peace Initiative、中東平和イニシアティブ)です。
 イスラエル・パレスチナ紛争の核心的アジェンダの一つに「エルサレムの地位を巡る問題」があります。

 エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラムの全てにとって、それぞれの神話・経典・伝承を基に「聖地」と崇める特別な場所です。
 それぞれの主張の違いによって、これらの三大宗教は「聖地」を巡ってぶつかっていますが、「中東平和イニシアティブ(MEPI)」のアプローチは根本的に異なります。

 中東地域における宗教の影響力の大きさに鑑み、むしろ宗教が持つ平和構築へのプラスの力を最大限に活用しようとします。
 極めて根源的な観点からのアプローチであり、対話と和解を中心に、2003年にはイスラエルにキリスト教・ユダヤ教・イスラム教・仏教の指導者約3000人を集めてエルサレム平和大行進を行い、宗教和合の儀式を展開しました。

 現在でも統一運動は国連機関に宗教指導者と政治家の対話を促進する超宗教議会の設置を呼びかけており、毎年世界宗教サミットを開催しています。
 統一運動の「超宗教」「超国家」の視点は、平和構築に欠かせない核心的な視点なのです。


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