世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

米ロ首脳会談、ウクライナに「安全の保証」を

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、811日から17日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 トランプ氏、首都ワシントンの治安維持に州兵を動員する大統領令に署名(811日)。李在明(イ・ジェミョン)政権、曺国(チョ・グㇰ)元法相、尹美香(ユン・ミヒャン)氏ら恩赦決定(11日)。尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領夫人・金建希(キム・ゴンヒ)氏を斡旋収賄容疑で逮捕(13日)。米ロ首脳会談、アラスカ・アンカレジで開催(15日)、などです。

 米ロ首脳会談が815日、アラスカ・アンカレジの米軍基地「エルメンドルフ・リチャードソン統合基地」で行われました。
 会談はアンカレジの現地時間15日午前11時半(日本時間16日午前4時半)ごろから始まりました。

 米ロ首脳の直接会談は、バイデン前政権下の20216月以来。ウクライナ侵攻後は初めてであり、トランプ氏とプーチン氏の会談は20196月以来でした。

 会談について主要メディアは、「停戦合意はできなかった」「具体的な進展を示せず」「ウクライナの停戦で合意に至らないまま終了」「トランプ氏の圧力は空振りに終わった」などと論評し、交渉を長引かせたい「プーチン露大統領の思惑どおりの展開」になったという論評もありました。

 会談を評価したメディアは「皆無」と言ってもいいでしょう。愕然(がくぜん)とする思いになりました。
 そんな中で、島田洋一衆議院議員(日本保守党)は18日、Xに以下のようにポストしています。

 力による現状変更は認められない、が国際社会の原則(理想論)だが、抑止が機能せず戦争となった場合に、いかに早く終わらせるかも、しばしば原則と矛盾する現実の課題。
 《ロシアは、現在占領下に置くウクライナ東部2州(ロシア系住民が多い)を決して自主的に手放さないし、ウクライナが軍事的に奪還することは困難》
 この状況を前提として、どう殺戮(さつりく)行為に終止符を打つか。
 「相対的にウクライナに痛みが大きい形での痛み分け」で妥協を図るしかないというのがトランプ陣営の発想。
 軍事力が「ロシア寄り」である現実を無視して、トランプのディール案は「ロシア寄り」と批判しても意味はないだろう。

 同感できる見解です。
 戦争を抑止できなかったことが一番重要なことであり、バイデン前政権やウクライナへの脅威に対する対応の失敗こそ教訓とすべきなのです。
 起きてしまった戦争を停戦や和平に向かわせることは極めて困難であり、理想論では無理な局面が出てくるのです。

 会談後の共同記者会見でプーチン氏は、ウクライナ問題の解決のためには「根本原因の排除」が必要だという従来の主張を繰り返しました。
 さらに、「ウクライナと欧州が、(和平への)進展を妨げないことを願っている」と語りました。

 一方、トランプ氏は「会談は非常に生産的で、多くの点で一致したが、いくつかの大きな点ではまだ完全に一致していない」と語っています。

 実際は、首脳会談で重要な進展があったことが明らかになりました。
 ウィットコフ中東担当特使が17日、米CNNテレビの番組で、ウクライナに対して北大西洋条約機構(NATO)の集団防衛に類似した「安全の保証」を提供することで、ロシア側と合意したと述べたのです。

 プーチン氏はウクライナのNATO加盟を認めない立場です。しかしウィットコフ氏は番組で、NATOの集団防衛を定めた北大西洋条約第5条に関連し、「米国と(欧州の)他の国々がウクライナに対して、実質的に第5条に類似した文言を提供できることで(ロシア側と)合意に至った」と明言したのです。
 停戦合意ではありませんが、より本質的な和平へのステップです。

 これまでトランプ政権は、ロシアに侵略されたウクライナが求める「安全の保証」に関し、米国の関与に慎重な姿勢を貫いてきたのですが、転換したのです。

 NATO加盟国の集団防衛を定めた北大西洋条約第5条とは、一つの加盟国への軍事攻撃を加盟国全体への攻撃と見なし、加盟国は攻撃された国の防衛義務を負うというものです。
 ウクライナが再び侵略された場合、米国を含むパートナー諸国が介入し、支援する内容と類似した文言で合意する見通しがついたというわけです。

 今後、ゼレンスキー大統領がワシントンでトランプ氏と会って和平実現に向けた案を調整することになり、そこには英仏独伊や欧州連合(EU)の欧州委員会、NATOの首脳も参加します。

 その会談で和平合意の道筋が見えれば、トランプ氏は米国・ロシア・ウクライナの三首脳会談につなげたい考えを明らかにしています。

 トランプ氏は16日に自身のSNSに投稿し、停戦後に和平を達成するのではなく、一足飛びに和平合意を目指すべきだとの考えを示しました。
 「戦争を終わらせる最善の方法は、単なる停戦ではなく、一気に和平合意にいくことだ」というのです。

 極めて困難な交渉が続きます。積極的、肯定的な視点を持って今後の展開を見守っていきたいものです。



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