2025.04.30 22:00
スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』3
小出浩久・著
スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。
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第1章 15カ月間の監禁生活
一、統一教会への入信①
1983年9月5日、当時、自治医科大学3年生であった私は、親友のM君の紹介で統一教会の人たちと出会った。彼らは宇都宮大学の学生3名と看護学生の1名であったが、私はその彼らを通して統一原理を学ぶこととなった。
私の家系は曾(そう)祖父の代から天理教の信仰をもっており、私も幼いころ、風邪を引いたり病気になったりしたときには、祖父から天理教で言う「おさづけ」という癒やしの業をうけて、よく治療してもらったことを覚えている。
また、私は両親を通じて天理教の教えにも触れ、時には両親とともに天理教のお祈りの「おつとめ」もした。天理教には「陽気ぐらし」といって、神も喜び、人も喜ぶという教えがある。けれども、現実には戦争、飢餓、虐殺、殺人、強盗等々、神も人も喜ぶことのできない不幸な事件が至るところで起こっている。私は中学生のころに、宗教的理想とこうした現実とのギャップ、さらには「性」に関する自分自身の内なる葛藤について随分と考えさせられた。
ところが統一原理を学んでみて、とりわけ人間の邪心を解きあかしている堕落論を学ぶことによって、人間始祖の不倫な性関係が邪心の原因となり、そこから戦争などの社会の矛盾も自分自身の内なる葛藤も起こってきていることを知った。
その解答を得たときの衝撃を、今でもはっきりと覚えている。
しかしながら、当時自治医大は、いなかの全寮制の大学という狭い社会だったので、友人達、先輩、大学教授が、統一原理を学び続けることに反対してきた。
私と故郷、出身校も同じで、とくに私をかわいがってくれていた先輩のS氏は「朝日ジャーナル(*1)」等を愛読しており、統一教会に批判的な情報を相当量収集していた。
そのS氏から、統一教会の偏った情報ばかりを聞いて不安を募らせた母親は、9月末から10月初旬にかけて、「一人で頭を冷やしなさい」と私を自宅に軟禁した。そこでは、特に私は誰からも説得のようなことを受けなかった。父の本棚の宗教関係の書物を読んですごした。その中には高橋佳子著『真創世記 地獄編』などがあった。
そのような反対にもかかわらず、統一教会に対する単なる「風聞」ではなく、自分自身の目で真実を確かめてみたいと思った私は、やっとの思いでその軟禁から逃れ、統一原理を学ぶための4日間のセミナーに参加した。
(続く)
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次回は、「統一教会への入信②」をお届けします。