2025.02.04 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 352
キリスト教霊性とイグナチオの「霊操」➁
聖霊の働きによってもたらされる人々の内的変革と成長
ナビゲーター:石丸 志信
イエスの復活と聖霊降臨の出来事を最初に体験したのは、復活したイエスに許された使徒たちと五旬祭(ペンテコステ)の日に集った弟子たちだった。
3000人ともいわれるこの者たちは、創造主なる神を「天の父」と呼び、兄弟愛に満ちた共同体を形成した。この共同体を「エクレシア(教会)」と呼ぶようになる。
そしてこの共同体の一員は、十字架にかけられ殺されたイエスが復活したこと、このかたこそメシヤ=キリストだとの「福音」を、ユダヤの同胞に、さらに異邦人へと伝播(でんぱ)していった。
彼らのメッセージを受け入れ、洗礼を受けた者たちは、霊的に新しい命を得て共同体に加わるようになる。
この者たちも、五旬祭の日に弟子たちが体験したことと同じ体験をすることになった。
イエス・キリストの受難、死、復活の出来事にあずかり、聖霊によって新しい命を得て神の子の自覚を持って生きるという経験は、個人の体験にとどまらず、共同体の共通体験として、時と場所を超えて、継承されていくことになる。
神学研究においても近年、「霊性史」というものが注目されるようになった。
それは、キリスト教の歴史的展開を、ただ外的な組織、制度の発展として捉えるだけでなく、聖霊の働きによってもたらされる人々の内的変革と成長が、どのように外的に展開してくるのかに注目するものだ。
その中心的資料として、古代のキリスト教指導者で信仰の模範を示した「教父」の著述や修道制の伝統というものが見直されている。
初代教会が形成された1世紀は、使徒たちが生きて活動しキリスト教の伝統の基を築いた。
2世紀に入ると、使徒たちの訓導を受けた者が使徒の教えを継承していった。その代表的な者たちを「使徒教父」と呼ぶ。
さらに、ギリシャ・ローマに広がる中、キリスト教の信仰を他者の批判から擁護する指導者「護教教父」が登場する。
3世紀以降、ローマ帝国に広がる中、キリスト教の正統信仰を巡る議論が活発となり、教養ある指導者が論理的に整理していくことになる。
重要なことは、彼らは、単なる知的探求者ではないということだ。
信仰に基づいてみ言を探求し、祈りを深め、共同体の中で模範的な生活を示してきた。困難な時代には殉教もいとわず、平穏な時にも自ら節制を課して、イエス・キリストに従う道を歩み通した。
脈々と続くこの命脈をたどると、イエス・キリストと聖霊の働きが彼らを突き動かしてきたことを感じ取ることができ、それによって、キリスト教共同体の中に生きる人々が、神霊と真理によって心霊と知能を成長させてきた様子を知ることができるのではないかと思う。
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