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映画で学ぶ統一原理 16

(この記事は、『世界家庭』2019年8月号に掲載されたものです)

ナビゲーター:渡邊一喜

『ウォーリー』
2008年。97分

人類に捨てられた地球で働き続けるロボット、
彼から学ぶ本当の幸せとは?

前編第1章 創造原理 第3節 創造目的

 創造原理は、『原理講論』全体の最重要項である。そして、その中心的メッセージが第3節「創造目的」で語られている。それはつまり、私たち人間の人生の目的である。

 今回はそんな「創造目的」をピクサーのアニメ、『ウォーリー』から読み解いていこう。
 『ウォーリー』は2008年、アンドリュー・スタントンが監督を務め、その年のアカデミー賞の長編アニメーション部門を受賞した。

 時は2805年の地球。人類は汚染され尽くした地球を去り、宇宙船で生活をしている。
 ゴミの山と化した地球には、ゴミ処理ロボットが残り、地球を清掃し続ける。そしてその最後のロボットが主人公のウォーリーである。

 あるとき宇宙船から、地球の生命体を探る探査ロボットが送られてくる。イヴと名乗るそのロボットに心引かれたウォーリー。2人は次第に仲良くなっていった。
 しかしイヴは、ウォーリーの家で偶然見つけた植物を自体内に収納すると、ロケットを呼び宇宙船へと飛び立ってしまった。そんなイヴを心配したウォーリーはロケットにしがみつき、宇宙へと飛び出していくのだった。

 この映画が描く世界観はいわゆるディストピア(暗黒世界)、人類の過ちにより崩壊した世界が舞台である。しかし人類は滅びたわけではなく、彼らの住む宇宙船はAIにより完全に統御されたユートピアだった。

 人間はただホバーチェアに乗り、そこに備えられたスピーカーと空間スクリーンでオンライン通話をしている。食べ物を要求すればロボットがすぐに持ってくる。争いもストレスもない、AIによる合理化と人間の快楽による選択がもたらした世界であった。

 全員が満足しているが、これが理想の世界の姿だろうか。私たちの本心から喜べる社会だろうか。安全だけが最優先された世界には、関係性の幸福も成長の喜びもないだろう。その中にいる人間は、社会システムに飼われているだけである。

 ウォーリーはイヴを探し、宇宙船に潜り込む。イヴを助けようと奔走する彼は邪魔者として排除されそうになるが、彼によってロボット同士の友情が芽生え、人間の男女は恋をし、船長は故郷愛に目覚めていく。そして自らがあるべき姿に立ち帰ろうとするのだ。

 創造目的を完成した世界の姿を、逆説的に考えさせられる。そして私たちを豊かにするものは「愛」以外にはないということを改めて気づかせてくれる作品である。

(『世界家庭』2019年8月号より)

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