夫婦愛を育む 135
励まそうと「恵みを数えよ」と言うのはNG

ナビゲーター:橘 幸世

 海辺の小さな図書館に寄ってみると、昨年本欄で紹介した『少女ポリアンナ』の続編『ポリアンナの青春』がありました。早速借りて一気読み。前作と変わらぬ面白さです。登場人物の心情の機微が細やかに描かれていて、それが読む者の共感を誘うからかもしれません。

 12歳の頃のポリアンナは、「喜ぶゲーム」、どんな事にも何かしらうれしいことを探すというゲームを喜々としてやっていて、出会う人たちを感化し幸せにしていきました。
 20歳になってもなお、そのゲームを続けているのだろうか、どんな大人になったのだろうと、子供の頃の彼女を知る人たちは(もちろん読者も)思います。

 続編で繰り返し書かれていたことの一つが、人はお説教されたら反発する、ということでした。「正論」は、言われた側が受け止められて初めて意味を成しますね。

 物語は、ある二人の裕福な姉妹の描写から始まります。ポリアンナは13歳。
 惨めさとつらさを嘆くだけの暗い日々を送る姉に元気になってほしいと、妹はポリアンナに引き合わせようとしますが、姉は抵抗してこう言います。

 「とにかく、何が耐えられないといって、おませな子が、まじめくさった顔で、わたしに感謝をすすめるお説教をたれるのなんか、ぜったいに我慢できない」

 妹の熱意に根負けして、ポリアンナを一時預かることを承諾した彼女はこう念押しします。

 「いいこと、その子がちょっとでもわたしにお説教をしようとしたり、わたしの持っているお恵みを数えさせたりしようものなら、すぐさまあなたにお返ししますよ」

 あくまで自然体で振る舞うポリアンナには、説教の「せ」の字も頭にありません。そもそも相手の良いところしか見えないのですから。結局、追い返されることなく、婦人の人生を明るくするのでした。

 やがて20歳になった彼女を、人生の厳しい現実が襲います。突然訪れた家族の死と経済的苦難に、同居する叔母はふさぎ込んでしまいました。ポリアンナは極力明るく振る舞い、うれしい側面を探しながら頑張りますが、つらい日々が続き、慣れない労働で疲れがたまってくると、さすがの彼女も上手に喜べなくなってしまいます。

 そんな彼女にある老女が、自身も含めて、どれほど多くの人がゲームのおかげで救われたかを話し、励まします。そして皆がゲームを受け入れた理由の一つをこう言うのです。

 「あんたは、人にお説教をぶったりしていませんからね。あれがお説教だったりしたら、私は絶対に『喜ぶゲーム』なんかしてなかっただろうし、ほかのだれだって、してないとおもいますね」

 ポリアンナは「喜ぶゲーム」を心から実践していた(「生きていた」と言っていいかもしれません)、その姿に皆が動かされたのです。

 言葉ではなく実体……ですね、やっぱり。


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