夫婦愛を育む 131
誰からも好かれるのは不可能です

ナビゲーター:橘 幸世

 「もしかしてあの人、私のこと嫌ってる?」

 そんなふうに心配になったことはありますか? 案外、覚えがある人は多いかもしれません。ちょっと素っ気ない態度を取られると、気にする人もいるでしょう。そんなとき、どうしましょう?

 ニューヨークにいた独身時代、普段は元気でニコニコしている姉妹がつんけんしていたことがありました。

 「私に怒っているのかな?」と身に覚えはなくても不安になった私は、カナダ人の姉妹に「彼女、私のこと怒っているのかな?」と聞いてみました。すると、その姉妹も「あら、私も彼女が自分に腹を立てているのかと思ってたわ」と答えたのです。

 皆、同じように考えるんだな、とちょっと安心しました。結局、彼女が不機嫌だった訳は分からずじまいでしたが、人は皆それぞれの事情と世界で格闘していると感じたように記憶しています。

 ヨーロッパにいた時も、ナショナルリーダー夫人が不機嫌にしていた時がありました。

 歳月を経て、それなりにたくましくなっていた(?)私は、本人に直接「もしかして私に怒ってる?」と聞いてみました。すると彼女は「違う。私は○○に怒っているの」と現地メンバーの名前を挙げ、理由を話してくれました。

 そんな経験から、周囲の人の感情と自分を、良い意味で適度に切り離して受け止められるようになったと思います(実際に自分に何らかの非があって相手が怒っている場合は修復に努めましょう)。

 幼い子供は両親が離婚すると、「自分が悪い子だからそうなった」と考えるという胸痛い話を聞いたことがあります。
 幼い頃は自分が世界の中心ですので、そうやって結び付けてしまうのかもしれません。成長とともに、私たちは物事を客観的に俯瞰(ふかん)的に見られるようになりますね。

 塾で教えている私は、皆が喜ぶ授業をしたいと願うものの、現実は全ての生徒に良い授業など不可能です。各自の学力レベルがまちまちですし、意欲にも温度差があります。できる子もやりがいを感じ、苦手な子もついていけるように工夫はしますが、限界はあります。人間ですから相性もあるでしょう。

 塾には新しく入る子もいれば辞めていく子もいます。退塾の話を聞くと心の一部からスッと元気が抜ける感じがします。
 辞める理由はさまざまで、中には「成績が上がりました。ありがとうございます」と言って辞めていった子もいます(責任者はガックリしていました)。
 家庭の事情、人間関係の問題、仲の良い友達に他の塾に誘われたなど、理由はいろいろあるでしょう。でも、自分の授業に引き留めるだけの力がなかったのも事実です。

 それでも、人生ひとまわり生きてきた私は、流せるようになっています。完璧(不可能)を追求せず、今できる精いっぱいをやって、後の判断はそれぞれにお任せです。

 誰からもよく思われようとして余分なエネルギーを使い、疲れるのはやめましょう。必要ならば、しばらく距離を置いてもいいのです。身近な大切な人との関係を育みましょう。


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