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映画で学ぶ統一原理 12

(この記事は、『世界家庭』2019年1月号に掲載されたものです)

ナビゲーター:渡邊一喜

『風立ちぬ』
2013年。126分。

愚直に、不器用に、全身全霊をもって、使命と家庭に向き合う

後編 復帰摂理

 2013年に公開された『風立ちぬ』は、アニメーション映画であるが、子供向けではない。監督である宮崎駿は、「アニメーション映画は子供のためのもの」というポリシーを持っており、時代と人生の不条理に焦点を当てた本作は、そのような意味でスタジオジブリらしい作品ではなかった。

 この作品は、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の設計者である堀越二郎の半生を、堀辰雄の小説『風立ちぬ』を下敷きに脚色し、もろもろのエピソードを加えて創作された映画である。

 主人公は二郎。飛行機好きの彼は、夢の中でイタリアの航空設計者カプローニと出会い、航空設計者を志すようになった。大学で飛行機の設計を学んだ二郎は、卒業後、飛行機の開発会社に入社。しばらくして戦闘機開発の責任者に抜擢されるが、二郎の開発した飛行機は試乗テストで墜落してしまう。

 失意の中訪れた軽井沢で、菜穂子という女性と再会する。菜穂子は、二郎が大学時代に起きた関東大震災時に、避難する中で出会った女性であった。この再会にふたりは運命を感じ、結婚の約束をする。菜穂子は結核を患っていたが、彼はそれを問題にしなかった。

 やがてふたりは結婚。二郎は、寸暇を惜しんで飛行機開発に打ち込み、帰宅も次第に遅くなっていくが、菜穂子は二郎の仕事に打ち込む姿を愛し、彼を励まし続けた。やがて菜穂子の病状は悪化し、二郎の前から姿を消す。そして二郎の開発した戦闘機は、最高速度の記録を跳ね上げ、空を鮮やかに翻る。そして時代は太平洋戦争に突入する……。

 印象的なシーンがある。仕事中に菜穂子が喀血で倒れたことを聞き、二郎は会社を早退して菜穂子の元に向かう。汽車に揺られながらも飛行機の図面を引く二郎だが、菜穂子を案じ、大粒の涙を流す。涙が図面にぼたぼたと落ち、それを拭い、また図面を引いていく。

 「飛行機の開発」と「菜穂子」は、二郎の人生そのものである。彼は、その二つをバランスよく両立させるようなやり方ではなく、ただ愚直に、不器用に、全身全霊をもって向き合っている。それは「み旨」「家庭」にジレンマを感じる私たちに、一つの信仰の姿勢を教えてくれているのではないだろうか。その二つは選ぶものではないのだと。

 松任谷由実の名曲が、感慨深いエンディングをさわやかに締めくくる。

(『世界家庭』2019年1月号より)

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