夫婦愛を育む 126
「え? 言ってたでしょ」と言わない

ナビゲーター:橘 幸世

 知人のJさんがこんなことを言っていました。

 夫が都会で働く息子と電話で話しています。
 コロナ禍の中、会社の方針はどうなのか、テレワークとなっているのか、親として気になっています。

 「基本的にテレワークで、自分の階で出社しているのは5、6人」という答えにうなずく夫。でも実はその内容、数週間前にも聞いているのです。隣で聞いていた妻は、「え、この間(息子が)言ってたじゃない?」と内心思いながらも黙っています。

 妻のJさんは、「他にも、誰々さんの息子さんは今どこで勤めている、とか、娘さんはどこの学校に行っているといった類いの情報は、本当に覚えてないのよ」と、ご主人の話を続けます。
 「気を付けないと、“~で働いているって言ってたでしょ”って、あきれてつい強めに言っちゃうのよね」

 それを聞いて私は、ヨーロッパにいた時のことを思い出しました。現地の青年が私に「子供は何人いるの?」と聞いてきます。私は「二人。男と女一人ずつよ」と答えます。
 すると、数週間後だったでしょうか、また話す機会があった時、彼が「子供は何人いるの?」と聞いてきたのです。

 男女の違いについてまだそれほど知らなかった当時の私は、同じ答えを繰り返しながら、「天気の話をするくらいの感覚で家族の話題を出したの? 特に関心があるわけではないんだ」と内心気分を害しました。

 でも今は、一般的に男性はそういった情報はあまり記憶にとどまらないらしい、ということを経験上知っています。ゴシップが得意の女性には理解しかねることですが…。

 上記の彼にも、怒って悪かった(彼は私が怒っていたことなどみじんも知りませんが)と今は思えます。

 「言ったでしょ」とあきれた口調で言ったら、相手は気分を害してしまうかもしれませんので(男性のプライドは敏感に反応するのです)、情報の優先順位が男女で違うことを心に留めて、気まずい雰囲気にならないよう努めたいですね。

 高校生に英語を教える中で、さまざまなジャンルの文章を彼らと読みます。
 先日は、ネット・ショッピングにおける男女の比較がつづられた記事を読みました。それによると、意外にも衝動買いは男性の方が多く、一品当たりの消費額も男性の方が高いそうです。

 新し物好きも男性。その根拠や細かいデータはここでは省きますが、「行動の違いの背後にはメンタリティーの違いがあり、男性は人に相談することを好まない。アドバイスを求めるのは弱さの現れであると考える」と書いてありました。

 講座でお話ししている男性のプライドが出てきたので、「どう? 君たちもそう感じるの?」と男子たちに思わず聞く私です。
 昨年の生徒たちは、無反応。まだ実感がないのか、シャイなだけなのか(女子の前ですし)分かりません。

 今年の生徒たちも似たような感じで、一人は「いや、僕ずっと人に頼って生きてきました」と真っ向否定です。あれれ、まだ本性が目覚めていないのか、それともこの時代、男性性相が薄くなってきているのでしょうか。でも、そう答えた彼は、周りをよく見ていて、言うべきことは言う、サポート上手な好青年なのですが。


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