青少年事情と教育を考える 118
休校期間に妊娠相談が増加、必要な性教育とは?

ナビゲーター:中田 孝誠

 新型コロナウイルスの影響で一斉休校が続いていた間、子供たちからの妊娠に関する相談が増えたというニュースがありました。

 熊本市の慈恵病院では、4月の中高生からの相談件数が前年より17件増えて75件となり、過去最多になったということです。同病院は赤ちゃんポストを運営している病院です。

 他の民間相談所でも通常の2倍から3倍の相談件数になっているということで、子供だけで家庭で過ごす時間が長くなった影響があるといわれています。アルバイトが休業になり、援助交際のようなことを行う子供もいるといいます。

 もちろん、今までと違う生活に置かれて不安やストレスを抱える子供たちをケアすることは、保護者や学校、そして社会全体の重要な課題です。

 一方、妊娠の相談を受ける団体は、相談が増えた背景として妊娠の仕組みや正しい避妊法を知らなかったことを挙げています。そして、中高生がそのような知識を持っていないのは、性教育が不十分だからだと指摘されています。

 仮にそうだとすれば、どのような性教育が必要なのかが問われます。
 一部の報道では、性交を教えないとする学習指導要領がハードルになり、また「過激な性教育」への批判が強く、必須の知識が教えられていないという声があります(47NEWS)。

 ただ、相談した子供たちは性の知識がないから性行為を行ったのでしょうか。
 性は命のことが関係します。また、教育は人格形成という目標があります。

 東京都教育委員会は、性教育に関する基本的考え方として、「学校における性教育は、児童・生徒の人格の完成を目指す人間教育の一環であり、豊かな人間形成を目的に、生命の尊重、人格の尊重、人権の尊重などの根底を貫く精神である人間尊重の精神に基づいて行われる」「児童・生徒等の状況に応じて、保護者の理解・了解を得ながら指導をしていくことが重要」であるとしています。

 また秋田県では、生命の大切さや思いやりといった心の面を重視し、中学生では性行為をしないという結論に導く性教育が行われています。

 子供たちに寄り添うことは重要ですが、性教育の内容は道徳的な内容も含めた視点で考えていく必要があるでしょう。それが本当の意味で子供たちを大切にする性教育になるはずです。