青少年事情と教育を考える 117
親と子の幸福学

ナビゲーター:中田 孝誠

 全国の学校がようやく再開されました。
 ただ、ストレスを抱えている子供も多く、学校や家庭、そして小児医療の現場などで子供の精神面のケアが重要になっています。

 今回はこのことに関連して、「幸福学」を取り上げます。

 学問として「幸福学」を研究している前野隆司・慶應義塾大学教授によると、幸福には次の四つの因子があリます。
 ここでいう幸福は、モノやお金などによる満足ではなく、健康や愛情など「長続きする幸せ」です。

①「やってみよう」因子(自己実現と成長):
 夢や目標を持ち、やりがいを持っていたり、それを実現させるために、学習・成長しようという意欲が高いと、幸せにつながる。毎日「今日やること」を決め、小さな達成感を味わうのが効果的。

②「ありがとう」因子(つながりと感謝):
 家族や友人など愛情に満ちた関係や、人とのつながりをつくり出すことで得られる喜び。人を喜ばせたり、愛情や感謝、そして親切にしたいという気持ちが幸せにつながる。家族みんなで感謝し合うことから幸せの連鎖が広がる。

③「なんとかなる」因子(前向きと楽観):
 物事に対して、常に楽観的であること。自己肯定感が高く、「なんとかなる」と自分を認め、自分自身を好きでいること。気持ちの切り替えが早いことが幸せにつながる。

④「あなたらしく」因子(独立と自分らしさ):
 周りや他人と自分を比べず、自分らしく、あるがままでいることで、他人に惑わされることなく幸せを感じる。

 この四つの因子を子育て中の親の立場から言い換えると、①子育ても自分の夢も大事。とにかく「やってみよう」、②あなた(子供や親)がいてくれて、「ありがとう」、③想いどおりでなくても「なんとかなる」から大丈夫、④「ありのままに」やったんだから失敗してもOK、ということになるそうです。

 これをいつも意識することが、子育ての幸福につながるというわけです。

【参考】
 いずれも前野隆司教授の著書
・『幸せのメカニズム』(講談社現代新書)
・『幸せな人生を送る子どもの育て方』(ディスカバー・トゥエンティワン)