夫婦愛を育む 113
優しくなれる○○

ナビゲーター:橘 幸世

 緊急事態宣言が全国に広がった中、私の勤め先は連休明けまで休講となり、主人も在宅勤務に入ります。夫婦で在宅勤務となってストレスが生じている、とさまざまな媒体で報告されていますが、さて、わが家はどうなるでしょう? 

 世界中の人々が未体験の事態に直面している今、専門家も素人もさまざまな知恵を絞って乗り切ろうとしています。

 先日テレビで、ある主婦が家の中に作った「優しくなれるテント」なるものが紹介されていました。それは大人一人がかがんで入れるくらいの小さなテントで居間の片隅に置かれていました。彼女は幼い子供が二人いて、家で過ごす時間が長い現在、当然ストレスもたまり感情のぶつかり合いが生じます。ぶつかって怒ったり泣いたりした時に、一人で入るテントだそうです。
 実際の現場を映像で紹介していました。上の子が「ママ、嫌い!」と大泣きした後、テントの中に潜り込みます。入ると間もなく気持ちが落ち着き、泣き止んでテントから出てきて、ママにハグしてもらいました。下の子が泣いた時も、同様に自分でテントに入っていきました。風景が変わったためか、すぐに泣き止みます。その早さに少なからず驚きました。もちろん、大人も必要なら入るのでしょう。

 別の番組では、心理学の専門家が、夫婦とも在宅勤務で負の感情が高ぶった時は、トイレにこもるのも一つの手、と提案していましたが、それと同じ理屈ですね。感情に流されるとささいなきっかけから大ごとになってしまいかねないので、その場を離れてクールダウンすることが大切なのでしょう。

 子供が親の目の届く所でこもれるようテントを用意し、「優しくなれるテント」と名付けたのは、素晴らしい知恵だと感嘆しました。
 かつて真のお父様も、夫婦げんかをしそうになったらトイレに入りなさいと語られたのを思い出しました。

 また、限られたスペースの中で長時間過ごす場合、これをするのはここ、と一つの事を決まった場所ですることや、各人の空間・ゾーンを大まかながら決めることも、心穏やかに過ごす上で有効でしょう。

 外出自粛で(あるいは減収ストレスもあるでしょう)、親がよく怒るようになったとの子供からのSOSも伝えられています。

 初めて遭遇する環境の中では、とりわけ逆境の中では、お互い気付かなかった内面の部分が現れることがあります。「意外と頼もしい」と見直すこともあれば、「こんなに自分勝手だったのか」と失望することもあるかもしれません。自身のもろさに愕然(がくぜん)とするかもしれません。それらも含めて自分も相手も受け入れ合いましょう。

 世間に批判や要求が溢れている現在、各人の「優しくなれる○○」を工夫していきたいものです。