世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

北朝鮮、軍人約100人が「病死」

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は323日から29日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 スペインの死者、中国を超す(25日)。米国の新型コロナ感染者、中国を超え世界最多に(27日)。ジョンソン英首相と保険・社会福祉省が新型コロナ検査陽性(27日)。米国の台湾支援法が成立(27日)。山中伸弥教授、コロナ治療薬開発へiPS活用を提案(28日)。ロシア、新型コロナ対応で45日まで厳戒態勢に(28日)。武漢で死者数巡る疑念が再燃、公表2538人、実際は数万人か(28日)。北朝鮮、日本海に向けて飛翔体発射(29日)、などです。

 北朝鮮は329日の未明、短距離ミサイル2発を発射しました。今月に入り2日、9日、21日、そして29日と4回目となります。東部の元山付近から北東方向の日本海に向けて発射しました。約230キロ飛行、最高高度は約30キロでした。

 河野一郎防衛大臣は同日、記者会見で北朝鮮の狙いについて、国内の引き締めなどの可能性があるとの見方を示しました。背景には、新型コロナウイルスの感染拡大による体制内の揺らぎがあるのではと想定されます。

 「読売新聞」は329日、北朝鮮の中朝国境付近に展開する軍部隊で2月末以降、新型コロナウイルスの感染が疑われる死者が100人以上出ていることが米朝協議筋の話として分かったと報じました。

 韓国国会の情報委員会所属の野党議員は3月3日、情報機関・国家情報院から受けた報告として、北朝鮮は129日、中朝国境を封鎖したことを明かしています。しかし、その時はすでに、感染が中朝国境付近で発生していたはずなのです。

 中国の「武漢封鎖」は123日です。その時、人口の半数500万人が市外にいたことが分かっています。

 「春節」といわれる中国の長期休暇は、翌日24日からの1週間でしたが、すでに多くに人々が動いていたのです。感染爆発状態のイタリアの最初の感染者は武漢から来た中国人夫婦であり、その発見は123日だったことも分かっています。

 北朝鮮だけが新型コロナウイルスの感染から守られるということはあり得ません。茂木外相は324日の記者会見で、北朝鮮が新型コロナウイルスの感染者「ゼロ」と主張していることについて、「中国、韓国と地続きの北朝鮮で全く感染者がいないということなら奇跡的だ」と述べ、「(北朝鮮に感染者がいないというのは)人類史上、そういった事態は考えられない」と断言しました。

 北朝鮮の異常なメッセージ(ミサイルの連続発射)の背景を勘案してか、トランプ大統領が金正恩委員長に親書を送ったことが明らかになりました。朝鮮中央通信が23日、金与正氏の談話として報道したのです。

 親書の中でトランプ氏は、米朝関係を促進するための「構想」を説明するとともに、新型コロナウイルス防疫で協力する意向を示していたというのです。米政府も21日、親書の送付を認めています。

 北朝鮮は、薬品や医療器具、医療体制そのものが「脆弱」です。想定を超えた悲劇的な事態がすでに進んでいるかもしれません。

 体制そのものの危機へと進む可能性が最も高いのは北朝鮮かもしれません。