コラム・週刊Blessed Life 110
気になる北朝鮮情勢

新海 一朗(コラムニスト)

 一体、北朝鮮はどうなっているのか。
 世界はパンデミックと化した新型コロナウイルスで大騒ぎですが、北は果たして大丈夫なのか。経済制裁で窮状にある北朝鮮にコロナが襲ったらひとたまりもないのではないか。いろいろな思いがよぎります。

 今、北朝鮮には気になる動きが起きています。旧正月の記念公演に6年ぶりに姿を現したのは、叔母の金慶喜(金敬姫)氏でした。金正恩によって処刑された張成沢の妻です。金慶喜も処刑されたのではとささやかれていたのですが、健在でした。

 そしてまた、金正恩の叔父の金平一氏が北朝鮮に帰国しました。彼は駐チェコ大使でしたが、31年間、外国にあって転々とし、北朝鮮に戻りませんでした。その彼が故国の地を踏んだ(呼び戻された)とはどういうことか。

 こういった一連の動きは金正恩体制に何らかの地殻変動が起きているのではないかといった観測を生んでいます。

 実際、金正恩は、政権の中枢部の間ではいろいろ陰口をたたかれているようで、また、最近のトランプ大統領は「金正恩と会談する予定はない」と公言し、米朝交渉も暗礁に乗り上げています。明らかに、金正恩は内外から追い詰められているといってよいでしょう。

 そこで、金正恩は巻き返しを図るために、金平一を帰国させ、金慶喜を登場させるなど、金ファミリーの結束をアピールする必要があったというのです。

 しかし、見方はいろいろあるもので、金平一氏の帰国の背景にはレジームチェンジ(体制転換、政権交代)が絡んでいるとの憶測もあります。

 米軍が金正恩の斬首作戦に出た場合、その後のレジームチェンジにおいて、米国は後継者に金平一を擁立するだろう、そうはさせじと、金正恩は事前にそれをストップし、阻止したのだという見方です。

 もう一つ心配なことは、金正恩の健康状態です。糖尿病や心臓病を患い、中国人医師とドイツ人医師らによって、重大な手術を受けているとの情報があり、本人はもちろん、周辺も憂慮しているということです。そこから、金平一の帰国は、政権の中枢部が「金正恩後」をにらんで動いている可能性もあるという見方まであります。

 国連や米国などから厳しい制裁が続く北朝鮮、そうであれば、金正恩の秘密資金は枯渇しますので、党員や軍に贅沢品を与えることができなくなります(そうやって、党や軍の忠誠心を勝ち取ってきた)。

 そんな特権層がいつ金正恩を裏切るか分かりません。金正恩が、今、最も信頼を置く側近は妹の金与正しかありません。金正恩が手術で入院している時も、政権中枢を担っています。

 新型コロナウイルスは、北朝鮮にも多大な影響を及ぼしています。
 金正恩はウイルスの流入に相当神経を尖(とが)らせています。北朝鮮全土に感染が拡大すれば、金正恩周辺に何が起きるか分かりません。すなわち、金平一が登場する(周りが担ぎ出す)可能性が高くなるかもしれません。

 その時には、妹の金与正は金平一によって粛清されるでしょう。
 あくまでも「もし…」の話ですが、いろいろなシチュエーションを考えると、現在の北朝鮮は、激震寸前であるといえるのかもしれません。