コラム・週刊Blessed Life 108
神霊と真理~米国キリスト教の特色

新海 一朗(コラムニスト)

 米国のキリスト教はトランプ大統領を支持する流れが強いようですが、キリスト教といっても大きな流れがいくつかあります。

 保守的なプロテスタントでは、聖書と聖霊の信仰に目覚めた福音主義が挙げられます。
 福音派は聖書的霊性を強調する米国において、最大の教派といえます。ブッシュ大統領やトランプ大統領を生み出した政治勢力でもあるからです。

 福音派はいかにして生まれ、いかなる思想と信条を持っているのか。

 福音派は聖書の言葉を文字どおり信じ、聖霊を強調する19世紀後半に生まれた宗派です。宗教改革以来の、いわゆる「伝統的なプロテスタント教会」(聖公会、長老教会、メソジスト教会、ルーテル教会、北部バプテスト教会、会衆派教会など)ではありませんが、聖書の権威、聖霊の賜物、回心と新生(Born Again)、超教派性を特色とし、中絶や同性愛を否定します。

 福音派と呼ばれる米国の教派には、南部バプテスト連盟、ペンテコステ派のチャーチ・オブ・ゴッド、アセンブリー・オブ・ゴッド、クリスチャン・アンド・ミッショナリー同盟、救世軍、自由メソジスト教会、ナザレン教会などがあります。

 大まかにいえば、福音主義プロテスタントは聖書の言葉をそのまま信じ、聖霊の働きを重んじる傾向を持ち、他方において、伝統主義プロテスタントは合理性をもって聖書を解釈し、神学を重んじる傾向があるといえます。

 米国の福音派は、自由主義神学を受け入れず、キリスト教根本主義(ファンダメンタリズム)にも同意できないという立場によって形成されました。
 米国福音派は、1942年、米国福音同盟(NAE)を設立しました。ビリー・グラハムが米国福音派の代表的人物です。

 20世紀初頭、米国では、自由主義神学(リベラリズム)と根本主義神学(ファンダメンタリズム)の論争が巻き起こりました。
 福音派は、ウェストミンスター神学校、ホイートン大学、フラー神学大学、トリニティ神学校などで指導者を育成しました。

 福音主義と根本主義は同一視される恐れがありますが、微妙に違います。
 根本主義は、19世紀から20世紀にかけて、自由主義神学に対抗する基本的信条を確立しました。聖書の霊感と権威(聖書の無謬性)、キリストの処女降誕、代贖的贖罪の教理、キリストの体の復活、イエス・キリストの再臨です。根本主義は、福音主義の基礎をなす概念ではありますが、教条的で、律法主義的な態度を取る狭い意味での根本主義(いわゆる、原理主義)なので、福音主義とは一線を画するものといってよいでしょう。

 米国プロテスタント(おおよそ共和党支持)は、福音主義と伝統主義の二大潮流を持つといえますが、コインの表と裏のようなもので、福音主義には伝統主義の要素があり、伝統主義には福音主義の種が宿っていると見ることができます。

 福音主義は文字の奴隷(文字崇拝)に陥っていると批判され、伝統主義は霊的感動に欠けると批判されます。
 これは信仰(福音主義)と理性(伝統主義)、神霊(福音主義)と真理(伝統主義)の問題と言い換えることができます。

 理想的な答えを求めるとすれば、福音主義と伝統主義の調和と統合に最良の解決策があると申し上げます。
 新しいキリスト教の在り方は、「神霊(神の真の愛の力)」と「真理(永遠絶対の真理性)」の両方において、偉大な力を有するものと見るべきです。