愛の知恵袋 103
妻の話をじっくり聞こう

(APTF『真の家庭』222号[2017年4月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

妻たちの大いなる不満

 あるセミナーのあと、参加した女性たち数名と懇談会になったので、「今、家庭生活のなかで、最も夫に願いたいことは何ですか」と聞いてみました。

 一人の女性が手を挙げて、「楽しい会話の時間がほしいです」と言いました。

 すると、他の女性たちも口々に、「もっと話を聞いてほしい!」「どうして男って話を聞こうとしないんですか?」と言い始めました。

 そして、「話を聞いてくれない」「話しかけても面倒くさそうな顔をされる」「すぐにイライラして、怒り出す」「何を言いたいの…とか、結論は何?…とか言って、話をせかされる」「最後まで聞いてくれたことがない」といった苦情がどんどん出てきました。そして、その結果として、心の奥深くでは、「思いやりが感じられない」「妻の気持ちを全く理解してもらえない」といった絶望感や寂しさを感じているというのです。

話を聞くことが苦手な男達

 以前、『話を聞かない男、地図が読めない女』という本がベストセラーになったことがありました。アラン・ピーズとバーバラ・ピーズというご夫妻の著書ですが、その第一章はこういう言葉で始まっています。

 「男と女はちがう。どちらが優れている、劣っているということではなく、ただ、ちがう」。そして、男と女の話し方、考え方、感じ方、反応のしかた、脳の機能のしかた、様々な場面での対応能力から、物事に対するとらえ方の違いまで、世界各国の男女の具体例を挙げながら、ユーモラスに語っています。私も、読みながら何度も腹を抱えて笑ってしまったことを思いだします。

 その本の中でも、ピーズ夫妻は、世界共通の男性の特徴として“妻の話を聞くのが苦手”ということを挙げています。

妻の話を聞くことは、想像以上に難しい

 実際に取り組んでみるとわかるのですが、男性が妻の話をじっくり聞いてあげるということは、考えている以上に難しいものです。

 ほとんどの男性たちは、妻が「もっと話を聞いてほしい」と思っていること自体に気が付いていないことが多いし、また、この点に関して、女性たちが大きな不満と寂しさを感じているということも理解できていないようです。

 セミナーや個別面談のとき、夫婦の会話のことをきくと、「私たちはなんでもよく話しています」とか、「私は妻の話をよく聞いています」と自信ありげに答えてくれる男性がいるのですが、その妻たちに話を聞くと、「夫がそう思っているだけです。全然、違います」「夫は私のことを理解できていません」と言うことが多いのを見ても、本当の意味で夫婦が分かりあえるというのは簡単なことではないということを感じます。

 実際、「妻の話をじっくり聞く」という行為は、男性にとっては相当の忍耐と寛容さが必要とされます。

 なぜかというと、女性の話の組み立て方や表現方法は、男性同士が話すときのそれとは全く違うからです。

 男性は用件のある時に話しますが、女性は用件がなくても話します。嬉しかったこと、悔しかったことなど、“共感してほしいこと”があれば話したくなります。

 そんな時は、登場人物から始まって、細かい人間模様と状況説明にまで話が及ぶので、夫にすれば「一体いつ終わるのか…」という恐怖感に襲われます。

 そして、男性同士の話とは違って、起承転結なんかどこ吹く風、論理性は無視、前後はバラバラ、自由自在に話は飛んでいくのです。従って、「話とはこうあるべきだ」というような男の論理などは一切捨てて、ただただ無心に聞いてあげる…という境地にならない限り、妻が満足してくれる聞き手にはなれません。

とにかく、妻の話をじっくり聞こう

 そんなことも承知のうえで、あえて言います。愛する妻たちの切なる願いをかなえてあげましょう! とにかく、夫たるもの、妻の話をじっくり聞いてあげましょう!

 第1に、妻が話しかけやすいように、穏やかな顔で接してあげましょう。

 第2に、話しかけられたら、「うん、何だい?」と顔を向けてあげましょう。

 第3に、「アドバイスしなければ」などと考えないで、ただ、聞きましょう。

 第4に、何を言われても怒らないで、最後まで聞いてあげましょう。

 第5に、聞き終わったら、「そう、大変だったねえ」とか「良かったねえ!」と必ずコメントし、共感してあげましょう。

 さあ、今日からこれを実行してみましょう。きっと、何かが起こりますよ。