青少年事情と教育を考える 97
人として育つ時間をスマホに奪われる

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回に続いて、読書に関連する話題を取り上げます。

 月刊誌『Voice』2月号に「読解力急落、ただ一つの理由」という興味深いインタビュー記事が掲載されています。答えているのは『国家の品格』という本で有名な藤原正彦氏(お茶の水女子大学名誉教授)です。

 昨年12月に発表された経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)で日本の子供たちの読解力の順位が大きく低下したことについて、藤原氏は子供たちが本を読まなくなったことに尽きると述べていますが、その原因にはスマートフォンがあると指摘しています。スマホの使用時間が年々長くなり、読書の時間が奪われているというわけです。

 藤原氏は、スマホの最大の罪は「読書の時間を奪っている」、あるいは「(人間にとって大切な)孤独になる時間を奪っている」ことであり、人間の深い情緒が育まれなくなっていると訴えています。
 スマホは“スキマ時間”を埋めるのに便利な機器ですが、スキマどころか人として育つ大切な時間を奪われているというわけです。

 このように見ると、読解力の低下はスマホ依存と強く関係しているといっていいでしょう。
 ちなみに、スポーツ庁が小学5年生と中学2年生に行った全国体力テストで、昨年は体力合計点が大幅に低下していました。これもスマホの使用時間が増えたことが原因の一つとみられています。

 文部科学省の中央教育審議会では、PISAの結果を踏まえ、国語の授業でさまざまなテキストを読んで自分の考えを表現する指導を充実させることや、国語だけでなくデータを読み取る力など全教科で取り組む必要があること、また幼児教育から育てていく必要がある、といった意見が出たそうです。

 文科省はデジタル機器を授業でさらに活用する方針です。これからの時代の変化を考えると必要なことだと思われますが、文章を読み解く力、自分の考えを言葉で表現する力、さらに言うと「どのような人間を育てるのか」という教育の目的も常に考えていかなければならないと思います。