愛の知恵袋 100
扉をたたけ

(APTF『真の家庭』219号[2017年1月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

人生最後の日に何を思うのか

 新年あけましておめでとうございます。

 新たな1年を出発するこの機会に、今までの自分を振り返ってみて、これからの人生をいかに生きるべきか…ということをじっくりと考えてみたいものです。

 あるアンケート調査で、80歳以上の老人100人に、「あなたの人生で後悔することがあるとすれば何ですか?」と聞いたところ、70%もの人が「失敗したことより、やらなかったことだ」と答えたといいます。

 私たちの人生の中で、「やりたい!」「やらねばならない!」と思っていながらも、失敗を恐れたり、周囲の目を気にしたりして、結局、行動できないままで終わることがいかに多いか…ということを物語っています。

 結婚しなかったこと、子供を持たなかったこと、やりたいことに挑戦しなかったこと、自分の夫や妻に愛情を伝えきれなかったこと、両親や子供にはっきりと感謝を言えなかったこと…等々、自分の不甲斐なさに後悔することがたくさんあるかもしれません。

自分の心に尋ねてみよう

 ずっと気になりながらも、やっていないこと。やりたいと思ったのに、踏み出せなかったこと。挑戦もしてみないであきらめてしまっていること…。そんなことはないでしょうか…。仕事、趣味、社会貢献……。

 心の声を無視してこのままやり過ごせば、楽ではあっても、人生の最後に後悔するかもしれません。

 なすべきことは、もっと身近な所にもあります。あの人に、この人に「伝えたい!」と思いながらも伝えきれずにいる感謝の言葉、謝罪の言葉です。

 自分のたったひと言の感謝の言葉で、生涯の苦労が報われる人がいるかもしれません。また、たった一度のお詫びの言葉で、長年の恨みがとける人もいるかもしれません。

 死後の世界があるのか、ないのか…。そのどちらであっても、生きているうちにきちんと清算しておけば、心は安らかになるはずです。

最大の後悔は“チャレンジしなかったこと”

 結局、人生の最後に残る後悔は、「失敗したことよりも、挑戦しなかったこと」なのです。リスクを恐れ、無難な道ばかりを選んで、なすべきことに挑戦もしなかったことが一番大きな後悔になるというのです。

 「人生は思い通りにいかないことだらけだ」ということには間違いありません。

 しかしまた、同時に、「想うことはかなえられる」というのも真実です。「こうしたい!」「こうなりたい!」という熱い想いをもって何かを熱心に追い求めるところにこそ、道は開かれるものです。

 「求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見出すであろう。門をたたけ、そうすれば、開けてもらえるであろう」(聖書マタイ伝77節)

 イエスの言葉が、新しい響きをもって私たちを励ましてくれます。

勇気を出して扉をたたこう

 若い時には考えないかもしれませんが、私たちの地上人生の時間は、実に短いものです。60歳を過ぎた人は、誰でもそのことを実感しておられることでしょう。

 「人生は一度しかない」「人生はもとには戻れない」「人生は短い」という3つの動かしがたい現実があります。時間は“命”です。その貴重な時間をいかに使うのか。

 最後の瞬間まで夢を持ち、目標を持って、その実現のために挑戦をつづける。

 可能性を信じて、周りの人達と力を合わせてやり続ける。そうすれば、万が一、達成する前に寿命が尽きたとしても、必ずその意思を受け継いでバトンを握ってくれるランナーがいるはずです。

 もちろん、挑戦すべきだといっても、それは“善なること”に対してです。悪なることへの挑戦は単なる蛮勇であり、身を亡ぼすだけの愚行です。

 私たちの心に浮かんだアイデアが、“誰かを少しでも幸せにできること”であるならば、勇気を出して実行に移しましょう。

 それは、家族や隣人への日常の些細な心遣いであろうと、国家を左右するような大事であろうと、変わりはありません。

 それを実行する過程では、多くの戸惑いが生じ、自分の弱さに直面するでしょう。

 そんなときには、「扉をたたけ!」です。思い切ってやってみましょう。