シリーズ・「宗教」を読み解く 91
京都キリシタン巡礼②

日本26聖人発祥の地で祈る

ナビゲーター:石丸 志信

 日本26聖人発祥の地で、特にフェリクス枢機卿の心を捉えたのは、14歳のトマス小崎が母親に遺した手紙の文面だった。

 父ミゲルと共に捕らえられたトマスは、三原の牢屋で、残される母親を心配して密かに次のような手紙を残した。

 「現世ははかないものですから、パライソの永遠の幸せを失わぬように努めてくださいますように。人々からのどのような事に対しても忍耐し、大きな愛徳を持つようにしてください」

 枢機卿は、パウロ三木の十字架上で語った最後の説教にも耳を傾けた。

▲日本26聖人発祥の地を訪れたフェリクス枢機卿

 枢機卿は、信仰の模範を示した先人への思いを胸に刻み、その場で静かに瞑想を始めた。「主の祈り」を唱えると、その場にいた者たちも口々に祈りの言葉を唱え、共に涙した。

 そこから50メートルほど歩いた通りの角に「妙満寺跡 二十六聖人発祥之地」の石碑が立つ。
 枢機卿の目には、わずか数年間、信徒らと共に献身的に医療奉仕と宣教にいそしむ聖人たちの姿が浮かんでいたのかもしれない。

 11月のフランシスコ教皇来日を前に日本26聖人のいた京都の町を訪問し、巡礼のひとときを持てたことに特別の意義を感じていた。