青少年事情と教育を考える 88
日本の保育者は評価が低い?

ナビゲーター:中田 孝誠

 先月(10月)から幼児教育・保育の無償化が始まりました。
 歓迎の声がある一方、従来は保育が必要なかった保護者のニーズを掘り起こして現場が混乱することや、保育の質の低下を心配する声も少なくありません。

 そうした中で、経済協力開発機構(OECD)が1025日に「国際幼児教育・保育従事者調査」を発表しました。対象は日本など9カ国の幼稚園教諭、保育士です。

 調査は次のような興味深い結果を示しています。

 一つは、日本の幼稚園教諭と保育士は、専門学校や短大、大学の卒業の割合が最も高く、その意味で専門性が高いといえますが、自分に対する保護者や子供、そして社会からの評価がとても低いと感じていることです。

 他の国では、保護者や子供から評価されていると感じるという回答が90%を超えていますが、日本では子供から評価されていると感じているのは75%、保護者から評価されていると感じているのは60%を超える程度で、社会からの評価に至っては30%にとどまっています。

 これについて詳しい分析はなされていませんが、要因としては保育士不足で忙しい一方で責任が重い、給与も含めた園の財政の問題、また保護者も学歴が高く、保育者が保護者から評価されていると感じられないということも考えられます。

 もう一つは、子供の言語や基本的な読み書き能力、数的能力を伸ばす上でどんな働き掛けをしているかという質問に関してです。

 大半の国では「歌やリズム遊びをする」が最も多かったのに対して、日本では「子供の目線に合わせる」がトップでした。

 他国では上位三つに入っている「本や絵本を使う」も、日本では挙げられませんでした。
 「子供たちが互いに話すよう促す」は他国とも共通していました。日本の場合、子供の話を繰り返したり、楽しそうな表情を示したりすること、つまり子供との接し方を前提にしているように感じられます。

 もちろん文化的な背景、また保育者各人の経験がありますから、日本と他の国のどちらが良いかは一概には言えません。文化を大切にしながら、子供たちの認知・非認知能力をどう育てていくか、議論を続けたいところです。