青少年事情と教育を考える 84
新文科相「LGBT教育は慎重にしたい」

ナビゲーター:中田 孝誠

 先月、新内閣が発足し、文部科学相に萩生田光一衆議院議員が就任しました。

 萩生田文科相は9月25日のメディア合同インタビューで、LGBT、性的少数者への理解を促す教育の必要性について質問され、次のように述べています。

 「いろいろな価値観が世の中にあり、その全てを公教育の段階で子供たちに学んでもらうのは、時期尚早な気がしている。どの発達段階でLGBTへの理解を求めていくことが子供たちにとってふさわしいかは、私も判断できていないし、いろいろな意見がある」(「教育新聞」10月3日付)

 つまりLGBTについての教育を一斉に行うことに慎重な姿勢を示したわけです。

文部科学省

 数年前から、LGBTの当事者を講師に招いて、出前授業を行っている小学校や中学校があります。
 もともと学校現場では、差別や偏見、いじめをなくすという目的で取り入れられたはずです。ところが、性別は男と女だけでなく何十種類もあるといった話までなされている所もあり、「今までは普通と思っていたことが普通ではないのだと思った」というような感想を持った子もいます。
 現場の先生たちが善かれと思って取り組んでいることが、もともとの目的から逸脱して、発達段階にある子供たちのアイデンティティを混乱させているわけです。

 確かに、子供の頃に自分の性別に違和感を持っていたという人もいます。ただ、子供のそうした違和感は、多くの場合、成長するにつれて消えていきます。そのため、子供がそうした性自認、性的指向であるとすぐに断定するのではなく、慎重に対応すべきだという専門家もいます。

 ちなみに、文科省が平成28年に出した教職員向けの資料では、性自認や性的指向について当事者団体から学校での講話の申し出があった場合、「性に関することを学校教育の中で扱う場合は、児童生徒の発達の段階を踏まえることや、教育の内容について学校全体で共通理解を図るとともに保護者の理解を得ること、事前に集団指導として行うこと、内容と個別指導との内容を区別しておく」という指針を示し、児童・生徒に与える影響に配慮し、教育の中立性の確保に十分注意を払って、適切な指導を行うよう求めています。

 発達段階にある子供たちに影響があると懸念される場合は、慎重に対応するのは当然でしょう。
 今回の萩生田文科相の回答は、文科省の立場を改めて明確に示したといえます。