青少年事情と教育を考える 82
非行少年の心のブレーキは「父母」

ナビゲーター:中田 孝誠

 最近よく読まれている本の一つに、『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)があります。
 医療少年院に勤務した経験を持つ精神科医が、非行少年には「反省以前」の子供が多いといった点を指摘し、少年たちを救うために何が必要かを提示しています。

 こうした本にもあるように、子供たちの非行の防止、また非行少年の更生は、いつの時代も社会の重要な課題です。

 今回は、法務省が非行少年と保護者を対象に行った「非行少年と保護者に関する研究」(201412月公表)を紹介します。

 非行少年の7割以上が犯罪の心のブレーキとして「父母」を挙げ、再犯防止には家族関係や保護者の監護能力の向上などが重要であることをデータとして示した興味深い調査です。

 調査は、20131月から3月末までに少年院を仮退院した799人(男子721人、女子78人)とその保護者を対象に行われました。平均年齢は、男子17.7歳、女子17.5歳です。

 この中で、保護者の離婚を経験していたのは62.5%です。10%の子供は複数回経験していました。非行の時に保護者が「実父母」だったのは31.7%で、「実母のみ」が40.7%、「実父のみ」が11.6%、「養父母を含む両親」が11.9%です。

 さらに、虐待を受けた経験があった子供は20.7%ですが、女子では39.7%に上っていました。
 それでも、非行に走った原因(複数回答)について、少年は「自分自身にある」という回答が99.7%で、「家庭や家族」「友だち」「学校や職場」という回答は半数以下でした。一方で、保護者も多くは「少年自身」(94.7%)に原因があると考えてはいるのですが、それだけでなく「家庭や家族」「友だち」「学校や職場」にも原因があるという回答が79割でした。

 そして、少年院を出た子供が保護者に期待するのは、多い順に「会話の機会を増やす」「再非行を防止する」「食事の機会を増やす」などです。
 保護者が子供の更生のためにしたいと考えているのは「再非行を防止する」「頑張りを認める」「欠点を改める」で、少年を受け入れるために「家の片付けなど生活環境をよくする」ことも良い影響を与えることが分かりました。

 家庭の重要な役割を社会全体で改めて認識しておく必要がありそうです。