夫婦愛を育む 83
「お母さん、それは仕事だよ」

ナビゲーター:橘 幸世

 台風15号の影響で9月9日朝、首都圏の駅に気の遠くなるような長い列ができました。

 酷暑の中、仕事に行くためにいつ乗れるか分からない電車を待って並ぶ人! 人! 人! そんなにまでして行かなくてはならないのか、と思ってしまいます。休むわけにはいかない、休むという概念はなかった、と午前中いっぱいかけて出社する人たち。出社するために費やしたエネルギーを誰か評価してくれるわけではありません。
 働くって大変だなぁとつくづく思います。

 炎天下、交通整理で立っている人を見ても、つい「大変だねぇ」と言葉が出ます。
 酷暑の中、わが家の屋根の葺(ふ)き替えに来た作業員さんに「暑い中大変ですねぇ」と言うと、「降ったら仕事にならないし(雨よりまし)」との答えが返ってきました。けれどそのベテランさんも、2日間屋根の上で一人作業した後、熱中症で入院してしまいました。扇風機付きのベストを着てはいたものの、そして小まめに休憩は取っていたものの、やはりきつかったようです。退院後、作業を再開し完了。凄いなと思いました。

 肉体的にハードそうな仕事をしている人を見るたびに、体力のない私はすぐ「大変だねぇ」と言います。それを聞くと主人は決まって「お母さん、仕事だよ」と諭すような口調で言います。

 その言葉に私は、仕事というものは大変なものだと主人が捉えていること、主人も日々(肉体労働ではないにしても)大変さを感じながら働いていること、働いて養ってくれていることの重みを改めて感じます。

 社会人3年目の青年が、仕事の厳しさに「生きてくって大変だな、と思いました」と言った言葉も忘れられません。そんな彼も、将来家庭を持ったら、多くの男性陣同様、家族の前ではその大変さをあまり出さないのでしょう。
 ならばこそ、妻たちは夫たちが見せない苦労を察し、夫に感謝し慰労するよう心掛けたいものです。男性はとりわけ仕事面で認められたいので、たくさん称賛し感謝しましょう。

 もちろん、女性たちも頑張っています。塾に来ている高校生たちは、多くが学校から直接塾に来ます。生徒が「先生、7時半にちょっとだけ(授業)抜けていいですか?」というので理由を聞くと、親がお弁当を届けに来るとのこと。共働きで、朝に昼用のお弁当を持たせ、仕事が終わってから、夕食のお弁当を届けるお母さんたち。また、「大変だねえ」と言いたくなる私です。

 皆それぞれに頑張って、支え合って生きています。ならばこそ、認め合い、感謝し合い、慰労し合っていきたいものです。