コラム・週刊Blessed Life 84
「常識という理性をきっぱり捨てなさい」

新海 一朗(コラムニスト)

 トーマス・エジソン(1847~1931)の言葉は非常に味わい深いものです。

 エジソンといえば、1,300の発明をした人で、まさに発明王です。
 白熱電球、蓄音機、活動写真、トースター、電気アイロンなど、「電気」にまつわる彼の発明品の数々は、20世紀を「電気の時代」にした最大の立役者がエジソンであったことを物語っているといってよいでしょう。

 彼は、エジソン・ジェネラル・エレクトリック(E-GE)という会社を設立しますが、これがのちに米国の世界最大の総合電機メーカー「GE(ジェネラル・エレクトリック)」になるわけです。

 エジソンは発明家であると同時に実業家でもありました。彼がどういう人物であったかを知ることのできるいくつかの言葉を見てみましょう。

 「ほとんど全ての人間は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行き着き、そこでやる気をなくしてしまう。勝負はそこからだというのに」というエジソンの言葉は、どこまでも諦めない精神の絶対宣言のようなものです。

 普通の人が、いや、相当に執念深い人でも、もうこれ以上駄目だという限界のところでさじを投げるでしょうが、エジソンはそこからが勝負だという姿勢を取るというのですから尋常ではありません。この精神がエジソンを偉大な発明王にしたと断言しても構わないでしょう。

 「一日8時間労働制に感じた危機感は、労働時間の不足などではない。働くということが、ただの決まりきった作業になってしまうということだ」というエジソンの言葉は、非常に辛辣な内容を語っているように思われます。

 エジソンの生涯を見ても分かるのですが、労働時間とかそういうものに全く束縛されていない働き方を貫いていますから、一日8時間労働制など、ほとんど本質的な意味を感じさせないものであったに違いありません。
 働くということが「ただの決まりきった作業」になるという指摘は、今日の企業社会で働く多くの人々が陥っている落とし穴かもしれません。
 「自分は、毎日18時間働くことにしている」と語ったエジソンにしてみれば、一日8時間労働制などは到底理解できないことであったと思われます。

 「大事なことは、君の頭の中に巣くっている常識という理性をきれいさっぱり捨てることだ。もっともらしい考えの中に、新しい問題の解決の糸口はない」というエジソンの言葉には、エジソンがなぜ発明王になったのかという疑問への答えが全て述べられています。

 常識という理性を打ち破らなければ、発明などできるものではありません。もっともらしい考えも駄目だと言っています。

 世の中には「常識という理性」「もっともらしい考え」を非常に大切なものであるとする風潮があります。しかし、常識などにとらわれていると、より良い新しい社会をつくることなどできませんよと警告しているのがエジソンです。

 現在、日本でも世界でも問題は山ほどあります。新しい問題の解決が求められている時代、常識というもっともらしさは、時に社会発展の妨害物になる恐れがあります。エジソンの言葉は底知れないほど深いのです。