青少年事情と教育を考える 80
増える家庭内暴力

ナビゲーター:中田 孝誠

 子供による家庭内暴力の事件が増えています。

 警察庁が最近発表した「少年非行、児童虐待及び子供の性被害」によると、昨年1年間に警察が認知した子供による家庭内暴力の事件は3365件です。10年前の平成21年の1181件から、ほぼ毎年増え続けています。

 このうち、小学生が438件(前年比71件増)、中学生が1545件(同160件増)、高校生が1023件(同130件増)でした。

 また、暴力を振るう相手は「母親」が2042件、「父親」が341件です。「家財道具など物」に当たるケースも512件ありました。

 暴力を振るった理由は、「しつけ等親の態度に反発して」(2114件)、「物品の購入要求等が受け入れられず」(562件)、「理由もなく」(269件)の順です。

 もちろん、子供の頃に親に反抗するということはあります。しかし、それが高じて暴力につながるケースが増えているとすると深刻です。

 『「子供を殺してください」という親たち』(押川剛、新潮文庫)という衝撃的なタイトルのノンフィクションがあります。
 著者の押川氏は、家庭内で暴力や暴言を振るう子供たちを家族の依頼で医療機関につなげるサービスを行っています。子供といっても、取り上げられているのは20代以降の成人した子供たちの暴力に悩む60代から70代の親たちのケースです。

 押川氏は、こうした問題の原因には、それまでの親子関係のひずみがあることが多く、それだけに子供を救えるのは家族しかいないと述べています。
 親自身が自分の人生を振り返って、子供と本音で話し合うことが必要だというわけです。

 問題を抱える子供たちのカウンセリングを行っている児童精神科医も、夫婦関係など家族の問題を改善することで子供の問題も解決すると強調しています。

 家庭内暴力を振るっている10代の子供たちの全てが将来深刻な事態を引き起こすとは限りません。それでも子供を救えるのが最後は家族であるとすれば、早い段階で夫婦、親子の家族関係を見つめ直し、いわば家族力を再生することが重要ではないかと思います。