青少年事情と教育を考える 79
繰り返される児童虐待死

ナビゲーター:中田 孝誠

 またしても児童虐待で幼い子が亡くなる事件が起きました。
 鹿児島県出水市で4歳の女の子が虐待を受けて亡くなった事件。容疑者は母親の交際相手です。

 昨年の東京都目黒区、今年初めの千葉県野田市の事件など、私たちは大きなショックと憤りを感じます。それでもこうした事件は後を絶ちません。

 しかも、今回は女の子が夜間に外にいるところを警察が4回保護し、児童相談所に一時保護するよう通告していました。女の子を救う機会はあったのに、できなかったわけです。その点で児童相談所が批判を受けてもやむを得ないでしょう。

 鹿児島の事件に限らず、児童相談所が関わっていても虐待死を防げなかった事件は少なくありません。

 厚生労働省のまとめによると、昨年度に児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は159850件に上っています。また、亡くなった児童は36人でした。

 同省の専門家会議が平成29年度に起きた児童虐待死事件を調査したところ、全体の6割の事例で児童相談所や市区町村の担当部署などが関わっていました。
 ただ、虐待で子供が亡くなった地域の児童相談所では、職員1人当たりが担当する事例が1年に平均140.5件、このうち虐待事例が81.6件に上っています(平成29年度)。
 諸外国は20件、30件程度ですから、日本の職員がいかに多くの事例を担当しているか、現場の深刻さが分かります。

 このため国も、児童福祉司を2022年までに新たに2000人余り増員するなど児童相談所の体制強化と職員の専門性向上に力を入れようとしています。
 例えば、虐待の有無を体の傷だけでなく子供の表情や部屋の様子で判断する能力や、家庭への介入と支援という両面が求められる仕事です。

 ただ、児童福祉司として一人前になるには少なくとも4~5年、児童虐待にきちんと対応できるようになるには10年はかかるともいわれています。
 専門家からは、児童福祉司の養成制度自体が不十分だと指摘されています(児童福祉司は自治体が任用しますが、任用資格を得るための大学の課程では児童・家庭福祉を学ぶ時間が少なく、児童虐待対応についてはほとんど触れられません)。

 人材育成の課題に取り組みながら、一方で虐待を予防する取り組みとして訪問型の家庭支援、妊産婦の支援などを強化していく必要があります。