世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

韓国、「日韓軍事情報包括保護協定」を破棄

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は8月19日から25日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 米韓合同軍事演習終了(20日)。立憲民主党と国民民主党が衆参の会派合流で合意(20日)。韓国政府が日韓GSOMIAの破棄を決定〈23日午後、通告〉(22日)。日韓議員連盟総会(9月予定)の延期決定(22日)。韓国軍が竹島周辺で軍事訓練を開始(25日)、などです。

 今回は、韓国政府による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄について扱います。

 8月22日の夕刻、韓国の国家安全保障会議・常任委員会が開かれ、GSOMIAの破棄が決定されました。

 日韓GSOMIAは2016年11月23日に締結されています。両国間で秘密軍事情報を提供し合う際、第三国への漏洩を防ぐための協定です。
 この協定は1年ごとに自動更新されることになっているのですが、終了させる場合は更新期間の90日前(8月24日)までに相手国に通告することになっています。決定に従って韓国政府(外務省)は23日、長嶺安政駐韓国大使を呼んで通告しました。これで、日韓GSOMIAは11月22日に失効することになります。

 協定締結前は、2014年に締結された日米間の「情報共有に関する取り決め」(TISA)に基づき、日韓が保有する情報を米国を介して共有する枠組みがありました。しかし迅速性に懸念があったのです。

 GSOMIA締結によって懸念は払拭(ふっしょく)されましたが、それ以上に日米韓の集団的安全保障体制構築に意味があったのです。それは北朝鮮に対応するものであり、さらに中国の軍事的覇権行動を抑止するものであったからです。

 安倍首相は22日の夕刻、破棄決定の知らせを聞き、「米国の要請にもかかわらず破棄したことで一線を越えたね」と周囲に語っています。
 香田洋二元海将も「歴史を通商に持ち込み、安全保障にまで持ち込んでしまった。越えてはいけない一線を越えた」(産経8月22日付)との認識を示しています。

 北朝鮮は24日、2発の飛翔体を日本海に向けて発射しました。日本の防衛省は韓国より先に、それが短距離弾道ミサイルであることを公表しました。日本のレーダー網では北朝鮮のミサイル発射地点を把握することができません。地球が丸いからです。しかし米国の軍事偵察衛星の赤外線レーダーによって把握することでき、発射後から日本海への着水までは日本のレーダーが補足できます。このように韓国のレーダー情報を得なくても、迅速にミサイルに関する情報を得ることは可能なのです。

 しかし日韓両国が共有すべき秘密軍事情報はミサイル情報だけではありません。朝鮮半島有事となれば安全保障に関する必要な情報は多岐にわたります。GSOMIAは無くても大丈夫、などの主張は間違っています。