青少年事情と教育を考える 77
子供の自殺を食い止めるためには

ナビゲーター:中田 孝誠

 夏休みが終わって新学期を迎える今の時期、心配されているのが子供たちの不登校、さらには自殺です。

 7月に政府がまとめた自殺対策白書によると、2018年に自殺した10代の子供は599人で、前年より32人増えています。

 遺書などにより自殺の原因を見ると、「学校問題」187人、「健康問題」119人、「家庭問題」115人、などでした。

 もう少し細かく見ると、小学生では「家族からのしつけ・叱責」や「親子関係の不和」、中学生では「学業不振」や「親子関係の不和」、高校生では「学業不振」や「うつ病」がありました。

 1534歳の世代で死因の第1位が自殺になっているのは先進7カ国の中で日本だけです。日本の若い世代の自殺はそれほど深刻な状況にあるということです。

 現在、文部科学省では、SNS(ソーシャルネットワークサービス)を活用して子供たちの相談を受ける事業を展開しています。

 どうすれば子供たち、若い世代の自殺を防ぐことができるのでしょうか。

 日本財団が3年前に行った「自殺意識調査2016」という調査があります。20歳以上の男女4万人余りを調査したもので、10代は含まれていませんが、ヒントになると思われます。

 それによると、20代で過去1年以内に自殺未遂を経験した人は15万〜23万人に上ると推計されました。

 自殺未遂の要因は、健康問題や家庭問題、経済問題が多く、さらにリスクを高めるのが「家族等からの虐待」「いじめ」「アルコール依存」などです。また、「他者は頼れず、人間同士は理解・共感できないと考えている」人もリスクが高いと指摘しています。

 これに対して、自殺のリスクを抑える要因として挙げられているのは、「家族の中に居場所がある」「自分には問題を解決できる能力があるというポジティブ志向」「自分は理解や共感ができると考えている」といった意識、自覚です。
 自己有用感、社会的問題解決能力、共感力が大切になるというわけです。また、「住み続けたい人が多い地域は、自殺念慮(自殺したいと思うこと)や自殺未遂のリスクが低い」という結果も出ています。

 やはり、家族、地域との関係が、生きる力をもたらすということを忘れてはならないのではないでしょうか。