愛の知恵袋 78
同じやるなら、喜んで!

(APTF『真の家庭』194号[2014年12月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

いやいやながら動く夫

 数人の婦人たちが話をしていました。「うちの夫は、私が何か頼んでも、気持ちよくしてくれるということがないのよね。昨日も、『あなた、ちょっとゴミを出しておいて』と言ったら、『えー、なんでぇ…』と言いながら、なかなか腰を上げてくれないの。『今、ちょっと手を離せないから!』と言うとやっと腰を上げて、ぶつぶつ言いながら出しに行くの。こんな感じだと頼みにくいし、スッキリしないよね」とAさんが言いました。すると、他の婦人たちからもいろんな本音が出てきました。

 「うちも同じよ。頼んでもイライラするから、もう、最初から頼まないことにしたの」

 「まだ、やってくれるだけいいほうよ。うちは亭主関白だから、全然やらないわよ」

 「じゃあ、うちは優秀なほうね。案外とすんなり動いてくれるわよ」

 「うちなんて、反対ね。夫のほうが細かくて、私がサッと応じないものだから、『あんたは尻が重たいね〜』なんて言われているわ!」

夫たちにも言い分が

 後日、男性数人と話す機会があったので、このことを聞いてみると、夫たちの言い分にもいろいろありました。

 「仕事で疲れているときに言われても、動く気になれませんよ」

 「言われれば、一応やりますよ。妻から恨まれるのは嫌ですからね」

 「言い方がきついんですよ。だからムッとして、動きたくなくなります」

 「私は、ぱっと動くことにしていますよ。妻の頼み方がうまいのかな」

 「うちは逆で、妻が“四角い部屋を丸く掃く”というタイプなんで、私のほうがいつもため息です」

“ものぐさ”な態度は嫌われる

 世の中には、「腰が重い」とか「無精(ぶしょう)」とか言われる態度がありますが、これは結婚生活を不愉快で重たいものにしてしまう原因の一つのようです。

 結婚した以上は、夫にも妻にも「お互いにうまくやっていきたい」という気持ちはありますから、相手から何かを頼まれた時は、「してあげなければいけない」と思っています。ですから、大概の場合、頼まれたらしてあげることになるわけですが、その時、喜んでサッとやってあげるか、ぶつぶつ言いながら恩着せがましくやってあげるか…によって全く雰囲気が違ってきます。

どうせやるなら、気持ちよく

 実は私にも経験があります。若いころ、仕事が忙しい時は心に余裕がなく、家庭で妻に何かを言われても、即座には反応できないことがありました。特に、妻が優しい言い方や、かわいい言い方で頼んでくれた時は、喜んで動けるのですが、命令するようなきつい言い方をされるとムッとして、素直に動きたくなくなるものです。

 しかし、元来が“お人よし”にできているのか、結局は言われたことは全てやるはめになります。こうなると、結果としてはやっていても、頼んだほうも、頼まれたほうも不愉快な思いが残り、スッキリとはしませんでした。

 ある時、「そうだ、どうせやるんだったら明るくサッとやったほうがいい。相手も喜ぶし、自分も気持ちがいい」ということに気が付いて自分の考え方を転換しました。

 それからは、妻から何かを頼まれても嫌な顔をせず、サッと引き受けることにしました。そして、あえて言葉に出して、「はい、了解!」「オッケー」「合点だ!」「お任せを!」などと言ってみると、自分としてもおかしくなるほど前向きに楽しくやれるから不思議です。これも一つの知恵ですね。

フットワーク力を身につけよう

 家の中の頼まれごとに限らず、仕事でも、付き合いでも、どうせやらなければならないことならば先延ばしにせず、“すぐにやる”ことです。その時、あえて口に出して「よし、やるぞ」と自分に言い聞かせたり、「問題ない。できる!」とこぶしを握ってみると、なぜか、心の中から前向きな意欲と力が湧いてきます。

 夫も妻もフットワークが軽くなれば、夫婦関係がスムーズになり、楽しくなります。

 それと同時に大切なことは、相手に頼む時、「明るく優しく言う」ということです。そうすれば、相手は素直に喜んでやってくれます。

 「行動力」という能力は、子供を教育する時にも非常に大切なポイントになります。

 今、若い世代ほど、結婚してもうまくいかずに破綻するケースが増えていますが、その原因の一つに“フットワーク力の弱さ”があります。子供の時から、お父さんやお母さんの手伝いをよくすると、将来、娘は家事や仕事を楽しくてきぱきとこなせる良き妻になり、息子は親切で行動力のある良き夫になることができます。