夫婦愛を育む 77
依存症は人間関係の問題

ナビゲーター:橘 幸世

 私の女性向けセミナーには、夫にDV(配偶者暴力)を受けている女性、夫がアルコールやギャンブル依存症の問題を抱えている女性が参加することがあります。
 個別に相談を受けることもあるので、それらに関する情報には目を通すようにしています。

 先月地元紙に載った、埼玉県立精神医療センター副病院長・成瀬暢也医師による記事は、とても興味深いものでした。薬物やアルコール依存症の患者を長年診てきている先生です。
 要点を紹介します。

 依存症の人たちは「意志が弱い」と思われがちですが、その奥にはもっと本質的な課題があります。
 年齢・性別・依存対象に関係なく、共通して見られる特徴が、「自己評価が低く、自分に自信を持てない」「人を信じられない」「本音を言えない」「見捨てられる不安が強い」「孤独で寂しい」「自分を大切にできない」の6点。
 その根本にあるのが「人を信じられない」です。

 成育過程などで、人を信じられなくなるような、深く傷つく体験をしている人が多く、その傷を抱えたまま生きるしんどさから、薬物などで感覚を麻痺(まひ)させて生きてきました。
 彼らを救うには、薬物をやめさせるという目先のことだけでは不十分で、まずは「本音を言える関係」、正直な気持ちを安心して話せるような関係を築くことが快方への突破口となります。

 人を信じられるようになると、人に癒やされるようになる。そうすれば薬物に「酔う」必要はなくなります。

 こう言って成瀬医師は、「つまり依存症は人間関係の問題なのです」と結んでいます。
 「人を信じられるようになると、人に癒やされるようになる」という言葉がとても印象に残りました。

 人間は助け合って生きていくように、そしてそこに愛を体験し、喜んで生きていくように創造されたのに、「人を信じられない」ということは悲しいことです。仮に誰かと生きていたとしても、内的には孤独であり、精神的に不安定です。

 人を信じられると、良き授受作用ができ、そこから力や喜びが湧いてくるという健全な関係を体験できます。過去の傷は癒やされ、情が安定し、前に進むことができるでしょう。

 実際、「DVは治らない」「ギャンブルはやめられない」「そういう夫と離れられないあなたも問題だ。共依存だ」と相談所で言われた女性たちが、幸福の原則を学んで良き授受作用を心掛ける中で、夫が暴力を振るわなくなった、パチンコをやめて稼いだお金を家に入れてくれた、と幸せな関係にシフトしています。
 夫たちが、自分を受け入れてくれる、信じられる伴侶を得たからでしょう。

 「人を信じられる」「本音を言える」――皆に通じる大切なメッセージかと思います。