世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

参院選-山本太郎氏と「れいわ新選組」

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は7月22日から28日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 駐日米大使が離任(22日)。韓国軍、「領空侵犯」の露軍用機に警告射撃(23日)。英、ジョンソン前外相が新首相に就任(24日)。北朝鮮、短距離弾道ミサイル2発を発射(25日)。米最高裁、国防費で国境の壁建設認める(26日)、などです。

 今回は、参議院議員選挙の結果、特に異彩を放った「れいわ新選組」(代表、山本太郎氏)について説明します。

 れいわ新選組が全国比例区で獲得した票数は約228万票。得票率は4.6%で社民党を越えたのです。当選者は比例特別枠の2人、山本氏は落選しましたが、次の総選挙を含む戦略的狙いがあるとみられています。

 れいわ新選組は今年4月に設立されました。これまでの寄付が4億円を超え、主な支持層は若者、左派と見られています。
 山本氏は6年前、参院東京選挙区から無所属で出馬し67万票を獲得し当選。反原発を掲げて戦い、当時は極左勢力との連携が指摘されましたが、治安関係者によれば「今は切れている」とのことです。

 朝日新聞は、7月27日付朝刊で、2ページ目の全面を使ってれいわ新選組を扱っています。その中に支持者の声が紹介されています。
 ある男性は、4月末にネットで見た山本氏の街頭演説がきっかけで支持したと言います。

 「あなたの生活が苦しいのはあなたのせいにされていませんか。あなたが役に立たないからとか、あなたが勉強してこなかったからだとか。冗談じゃない」と訴える山本氏の言葉を聞くうち、涙が溢れてきた、というのです。
 通帳の残高は5万円ほど、その中から1万円をれいわ新選組に寄付したのです。

 山本氏の政策の中心は、「反原発」「消費税廃止」「最低賃金1500円」「辺野古新基地建設中止」などです。特に「貧困層」に目を向けた政策を中心に掲げています。そして「自信が奪われているんじゃないですかみんな。自己責任? 違う。国がやるべきことをやってこなかった」「生きててくれよ!」「生産性ではなく、存在しているだけで人間は価値があるという社会を実現するために政治がある」などと訴えたのです。

 朝日新聞の出口調査によれば、回答した無党派層の10%がれいわ新選組に投票しており、公明党、共産党、国民民主党を上回っています。

 経済格差の拡大が指摘される中、彼らのターゲットは「貧困層」です。
 しばらくは既存左派政党に不満を持つ人々を引き付けるでしょう。野党勢力の再編が起こるかもしれません。決して侮ることのできない存在です。