情報大国、インテリジェンス大国としてのイギリスと日本の新時代(前編)


(第1回 ここがポイント! ビューポイント〈プレゼンター:木下義昭〉より)

 日本もいよいよ令和の時代になりました。退位された上皇・上皇后両陛下に心から敬意を表します。そして新たに即位された天皇・皇后両陛下のもと、日本が平和で安全な国家として繁栄することを願います。

 さて、皆さんもご存じのとおり、日本の皇室は特にイギリス皇室との親交を深めてきました。

 今回はそんな親交深いイギリスの、「情報大国、インテリジェンス大国」としての一面を見ていきます。

 去年、久しぶりにイギリスを視察してきましたが、やはりイギリスには「底力」があるなと感じました。

 かつては「七つの海を支配し、太陽の沈まない国」といわれ、世界最強の国だったイギリスですが、現在はEU(欧州連合)離脱を巡って混乱状態が続いています。

 当時のキャメロン首相の「国民投票実施」という判断ミスが原因です。

 しかし、再び立ち上がろうとしています。

 最近、イギリスと日本に関する重要なニュースが入ってきました。
 イギリスの国際戦略研究所(以下、IISS)が、来年(2020年)3月頃までに新組織として、「日本部」を正式に発足させるということです。
 そしてこの日本部に対し、日本政府と外務省は、約9億円を拠出する予定です。

 IISSは、1958年にアメリカのフォード財団の援助によりイギリス・ロンドンに設立された、民間の国際的戦略研究機関です。
 イギリスからアメリカに渡った人々、いわゆるアングロ・アメリカ(アメリカとカナダからなる北アメリカ大陸の文化的地域概念)の子孫を守り、繁栄させるために設立されました。

 ここで、IISSの特徴を見ていきましょう。
 IISSは、毎年世界の軍事力を分析して発表する「ミリタリー・バランス」を発行していることで有名です。皆さんも時々耳にするかと思います。

 さらに毎年シンガポールで、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)を開催しています。2002年から18年間続く、アジア太平洋地域の国防大臣などが多数参加する国際会議です。

 では、今回「日本部」を新設する狙いは何でしょうか。

 それは、今までのヨーロッパを中心とした考えから、「アジア重視」の考えに変えていくということです。
 特に中国との協力関係を探りながら、日本との協力を強化したいという考えです。そして日本側にも、イギリスが持つ「世界の情報」を得たいという事情があります。

 IISS所長のジョン・チップマン氏は「読売新聞」のインタビューで、「日本部」新設について以下のことを強調しています。

① 本部新設の背景にアメリカのトランプ大統領登場以降の激変する世界情勢がある。

② このような時代に、世界第3の経済大国・日本との関係を再活性化し、われわれの戦略議論の中央に日本を位置付けることは極めて有意義である。

(後編に続く)

(U-ONE TV『ここがポイント!ビューポイント』第1回「情報大国、インテリジェンス大国としてのイギリスと日本の新時代」より)

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