シリーズ・「宗教」を読み解く 73
現代日本の宗教事情⑤
「無宗教」だけれど、実は宗教的情感が豊かな日本人

ナビゲーター:石丸 志信

 世界の宗教人口分布図では、日本は中国と並んで灰色に色分けされた「無宗教」の国だ。五大宗教が世界地図を塗り分けている中では特殊な国である。しかし、「無宗教」の中身では、はなから神仏の存在や儀礼を否定する人は1割程度にすぎない。7割は「宗教性は大切」という国民性は重視してもよい点だ。

 激しく沸き起こるエネルギーで人々や社会に働き掛ける「宗教活動」には抵抗を示す。しかし、人間を超えた存在を仰ぎ見、神仏を崇敬(すうけい)する行為は、日本の伝統、慣習として抵抗なく実践されてきた。それを「非宗教」と呼ぶことで、おのずから沸き起こる宗教的情感を柔らかく包み込んでいる。

 この日本の伝統、慣習は「市民宗教」と呼び得るものではないか、との考えもある。「市民宗教」の概念は、もともとキリスト教を否定する世俗社会の統合の象徴として提示されたものだ。だが、現代では、「国民文化の道徳的凝集力」の意味で用いられ、「集合的アイデンティティーを構成する政治的・宗教的な儀礼やシンボルの総称」と定義付けられている。

 世俗化が進行している現代の日本においても、国民のあるべき姿を求める内的欲求は抑えがたいものがある。そこに、今日にふさわしいビジョンを示す役割が私たちにあるのかもしれない。