愛の知恵袋 72
歩くことの素晴らしさ

(APTF『真の家庭』186号[2014年4月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

健康オタクだった友人が、病気に

 友人のAさんは60代、健康食品などに詳しく、毎日10種類ほどのサプリメントをのんでいて、人に会うたびに新しい健康食品の効用を熱く語っていました。

 最近、音沙汰がないなあ…と思って電話をしてみると、なんと、その彼が高血圧と糖尿病になっていました。私は、「夜遅いのと運動不足が良くないんじゃないの」と、毎日少しでも外を歩くことを勧めました。

 半年後、彼はすっかり元気を取り戻していました。いつもなんとなく重くてだるかった体が、毎日、歩くことを心がけたところ、目に見えて症状が回復したそうです。

 彼は「どんなに薬や健康食品をのんでも、体を動かして運動しないと意味がないということがよく分かったよ」と言っていました。

 誰でも50代になれば体のあちこちに故障が生じ、60代になれば体調管理に取り組まざるを得なくなります。

 健康の基本は、バランスの良い食事、快適な便通、きれいな空気、適度の睡眠、適度の運動だと言われています。

 現代人の私たちが一番陥りやすいのが、夜更かしと運動不足かもしれません。テレビやインターネットの普及で夜型生活になりがちです。また、交通機関が発達し、車依存の生活になったため、運動不足に陥りがちです。

 最近は、若い人でも頑固な便秘や不眠症で悩む人が非常に増えていますが、それも、適切な運動をすることによって、ほとんど解決するようです。

歩くことに勝る健康法はない

 私たちは、60歳になったら第2の人生になりますが、新しい仕事をするにも、趣味やボランティアをするにも、最低限の健康と体力がなければできません。

 何か体に不具合が生じれば、すぐ薬や健康食品で解決しようとする私達ですが、それだけでは決して望ましい成果を得ることはできません。やはり、適度の運動をしない限り、体の健康は保てないのです。

 運動が必要というと、何かスポーツを始める、ジムに通う、ジョギングをする…などと考えがちですが、そのような無理をしなくても、一番簡単で、誰でもできて、お金もかからず、しかも、最も効果的な運動が、実は、“歩くこと”なのです。

歩くことによる11の健康効果

 『60歳から始める寝たきり・ボケにならない体にいい歩き方』(コスモ21社)の著者で、薬学博士の久郷晴彦(くごうはるひこ)先生によれば、“歩くことには、次のような驚くべき健康効果があると言われます。

1. 筋力が増し、新陳代謝が活発になる。

2. 関節の柔軟性が高まり、平衡感覚が良くなる。

3. 体のゆがみが取れ、姿勢がよくなる。

4. 骨が丈夫になり、骨折防止になる。

5. 腸が活性化し、消化、排泄が良くなる。

6. 循環機能が活性化し、血圧が安定する。

7. 心肺機能が向上し、酸素の摂取量も増える。

8. 脳が活性化し、ボケ防止になる。

9. ストレス発散になる。

10. 肥満予防、糖尿病予防になる。

11. 免疫力、自然治癒力が高まる。

体に良い、上手な歩

 さらに、効果的で上手な歩き方の秘訣は、次のような点だと言われます。

1. 背筋を伸ばし、あごを引き、楽な姿勢で歩く。

2. 歩くのに合わせて、リズムよく呼吸する。

3. 腕を軽く振り、普段より少し速目に歩く。

4. 自分の足に合ったシューズを選ぶ。

5. 食後なら30分、食前なら1時間、間をおいて歩く。

6. スポーツ飲料などで、適度に水分を補給する。

7. できるだけ自然に接しながら歩く。

 また、「1日にこれだけは歩かなければならない」とか、「絶対休んではならない」とか、固く考えすぎるとストレスになって逆効果。季節に合わせて服装を選び、体調や天気に合わせてコースを変えたり、おおらかに考えること。

 そして、何よりも大切なことは、「楽しみながら歩くこと」だそうです。春夏秋冬の自然の美を楽しみながら歩いたり、夫婦や親子で一緒に歩いたりできれば、素晴らしいですね。