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通いはじめる親子の心 18
心から謝る

 アプリで読む光言社書籍シリーズ第6弾、『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』を毎週火曜日配信(予定)でお届けしています。

多田 聰夫・著

(光言社・刊『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』より)

第四章 愛情を伝える

心から謝る

②謝る
 第二は、謝ることです。「ごめんなさい」と言えるかどうかは、家族に対しての主体性のバロメーターとも言えます。自分のイメージを気にしたり、親としての立場にこだわってしまったり、他人の評価が気になったりして、子供に「謝る」ことをしない親がいます。でも、「謝る」ことが自分のダメージになるでしょうか。そんなことはありません。かえって家族に対して積極的に責任を持つことなのです。謝ることをしない親に、子供は幻滅してしまうものなのです。

 これも面と向かってすることが難しいときには、メールでもよいのです。謝らなければいけないと思ったら、時間を置かずに、できるだけ早く謝るのです。

 親が子供に謝ることで、子供は親を許し、愛するチャンスを得ることになります。そして、何でも話し合える親子関係をスタートできるのです。

 「早く謝る」ことが大切です。「あなたが謝ったら、私も謝る」、これが一番良くないことです。

 親子関係がとても難しいお母さんと、26歳の娘さんが一緒に修練会に参加したことがありました。その修練会は、親子関係を取り戻すための修練会でした。

 その修練会で私は進行係だったのですが、娘さんが、「お母さんは一度も私に謝ったことがない。お母さんに謝ってもらいたい」と言うのです。それで、そのことをお母さんに伝えたのです。すると、お母さんは、「何度も謝ったわよ。娘だって問題があるのに、どうして私だけ謝らないといけないのですか」と言うのです。

 そして、「私は教会のこともしているし、母親もしているし、妻もしている。ボランティアもしているし、バイトもしなけりゃいけない。もう、いっぱいやっているのに、どうして私だけ悪者にならないといけないの」。

 この母親は多分、娘さんに謝ったのでしょう。でも、それは言葉だけで、心からのものではないので、子供の心には届いていないのです。

 三時間ほど話をして、ようやくもう一度、謝ることに同意してくれたのです。ところが、「何を謝ったらいいのでしょう?」と私に聞いてくるのです。娘さんの気持ちが分からなくなってしまっていたのです。「それでは、何を謝っていいのかも分からなくなってしまった、何も分からなくなってしまったことを、素直に謝りましょう」と言ったのです。

 その母親は、実際に娘さんに謝るまで、さらに二時間もかかりました。でも、母親が子供の心が分からなくなっていたことを素直に謝ることによって、この親子は新しい出発ができたのです。

③悪口を言わない
 第三は、陰で人の悪口を言わないことです。その場にいない人のうわさ話や悪口を言う、人にはそういう堕落性があるものです。その人がいなければ言わないのに、いなくなれば言うのです。そのような行為は、人の信頼を損ねるものです。

 誰に対しても誠実であることです。その場にいない人に対しても同じです。

 親が人の陰口を言っているのを子供が聞いたら、どう感じるでしょうか。親に対して信頼できなくなり、尊敬することができなくなるでしょう。親が人のことを悪く言うのを聞いたら、自分のいないところで、自分のことを悪く言っているに違いないと考えるものです。

 「私の親は、陰で人の悪口を絶対に言わない」というのは、非常に高い信頼を子供の心に預け入れることができるのです。

④約束して守る
 第四は、約束し、それを守ることです。誕生日会をすることを約束する、話し合いの場を持つことを約束するなど、子供といろいろなことを約束することでしょう。その約束をしっかりと守ることです。

 大抵、親子の約束を破るのは、親のほうではないでしょうか。何かの用事ができたとか、仕事でどうしても約束を守れなくなることはあるものです。

 そういうときは、子供の目を見て、「ごめんね。約束したのに、用事が終わらなくてね。必ず、きょうの夜には時間を取るからね」と謝って、自分の気持ちを伝えてください。親が必ず約束を守り、自分のために時間を取ってくれるという信頼感は、とても重要です。そういう信頼感があると、子供は親の話を聞く余裕が出てくるのです。(続く)

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 次回は、「謝ることを求めず許す」をお届けします。


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